2024年 8月 の投稿一覧

2024年8月

「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」は、ご存じの方も多いでしょう。検索すれば、いくらでも解説が出てきますが、今では、再現性がない理論の1つとも指摘される一方、秩序を維持するために、軽微な犯罪を取り締まろうとする意図については意義があると思います。言うまでもなく、社会的コストとのバランスを考慮した上で。

しかし、だからと言って、軽度な違反に厳罰を科すのは、逆効果になるかも知れないというのが今回の主題です。

改正道路交通法の施行(2023年4月1日)により、自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されました。ただし、“努力”義務ですから、違反をしても具体的な罰則はなく、むしろ、交通事故に遭遇した場合の過失割合とか、保険の補償対象外になる危険性の方が、大きな問題なのだろうと思います(要するに、運転者の安心・安全のため)。

ここで、仮に、ヘルメット未着用に対する罰則を極めて重くすると何が起こり得るでしょう。

急いでいる時など、ついうっかりヘルメットをかぶり忘れて自転車に乗り、それを誰かに見られたとします。その時、犯人は、目撃者に危害を加えて口封じしようとしたり、危険を犯して逃げようとしたり、もしくは、目撃者による犯人への恐喝や脅迫を誘発することもあるかも知れません。つまり、より大きな犯罪を発生させる恐れがあるということです。

話は逸れますが、近年よく見かけるようになった電動キックボードも、使用時のヘルメット着用は努力義務だそうです(かぶっている人を見たことはありませんが…)。どちらかと言うと、こちらの方が危険なのでは?と思う時もありますが、自転車と比べてシェアリングサービスの利用率が高い=ビジネスが先行しているので、商売の妨げになりそうなヘルメット着用の義務化は、おそらく進まないでしょうね。

もう少し日常的なところですと、他者の行動の中に、自分の意に沿わない(でも、本人はやりたい)ものがある時、それを厳しく禁じてしまうと、その行動が表から見えなくなり(地下に潜り)、気が付かないうちに事態を悪化させる可能性が高まります。このような場合は、監視下に置きつつ、逸脱の程度を把握しながら適度な罰(注意)を与える方が、秩序を保つ上では有効ということも考えられるのです。

まとめると、量刑は段階的でなければならない、違反と罰則のバランスが重要という話でした。

2024年7月

先日、高校生から「脳波測定を体験したい」という問い合わせがありました。中学生や高校生からの問い合わせは、これまでも2年に1回くらいありましたが、脳波はマイナーな分野ですから、そう多くはないですね。

貴重な機会ですから、どうして体験したいと思ったのかを尋ねたところ、授業の課題で睡眠について調べていたら「α(アルファ)波」に興味がわいてきたとのことでした。何はともあれ、若い人に興味を持ってもらえるのは嬉しいことですし、出来る限り協力したいなとは思っています。

脳波の講座などでも説明していることですが、医学分野の脳波と工学分野の脳波では、測定の目的も解釈も異なるところがあります。アルファテックシリーズの最新機器であるアルファテック7は工学分野の脳波測定機で、脳力開発(能力開発)に適したニューロフィードバック装置として進化してきました。そのため、α波をスロー・ミッド・ファストの3種類に分けるなど、独自の視点を取り入れながら計測を積み重ねてきたわけです。

脳波測定の特性としてリアルタイム性が挙げられるため、マインドフルネス瞑想を始めとした課題遂行時の脳波を測定して、その変化を確認しながら即時対応でトレーニングに活かすのも有効な使い方の1つだと思います。これが、いわゆるニューロフィードバックトレーニングです。そう考えると、睡眠中の脳波を測定する場合でも、単に睡眠の質を評価するより、何らかの課題を実行して、その影響を確認するのも有意義な計測と言えるはずです。

さて、睡眠に関する著書として「脳は眠りで大進化する」(著者・上田泰己) が出版されました。上田先生は、20年ほど前の時点で、既に世界的にも注目される研究者でしたが、なるべく多くの時間を研究に使うためなのでしょう。この本が、ようやく初めての単著(語り下ろし)です。

脳波の話もところどころに書かれていますし、「脳は第二の心臓」という内容を含めた睡眠覚醒研究の今後の見通しについても語られています。そして、新書とはいえ手加減していない(中途半端に内容を易しくしていない)ところは、こだわりの1つなのかなと思いました。睡眠に関心がある方は、特に興味深く読むことが出来ると思います。