2025年3月

弊社の創業者で、現相談役の志賀一雅が2022年に出版した「神さまの周波数とシンクロする方法」(ビオ・マガジン)。Amazonでも210個の評価、カスタマーレビュー4.4/5ということですから、なかなかの高評価を得ていると思います。

この本についてはYouTubeでも取り上げている方がいて、例えば、登録者数約6万人のコトゾラ【スピリチュアル本の紹介】というチャンネルでは、「【人生が変わる呼吸法!】神さまの周波数とシンクロする方法(志賀一雅さんの本をご紹介)」というタイトルで10万回以上再生されています(2025年3月末時点)。

私も視聴してみましたが、全体として非常によくまとめられていると思いました。視聴者のコメントにも「もしかしたら、本を読むよりもこちらの動画のほうが面白くよくわかるかもです。動画のほうがイラストのお陰で理解が深まり、記憶に残ります」というものがありました。ぜひ本も読んでいただきたいとは思いましたが、それくらい分かりやすいということでしょう。

松下幸之助さんの不眠症のくだりで、「松下電器グループが順調に成長し、次々に新事業を展開している~ことを、寝る前だけでも『よかった』と喜び、『ありがとう』と感謝されてはいかがでしょう」という本の内容が紹介されています。このように、具体的な内容を思い浮かべながら「よかった」「ありがとう」をすると、脳波は10Hzになりやすいはずです。

この10Hzについて、「自然界に存在しない人間特有の周波数」「10Hzの祈りだと、空間に存在する自然の波動の助けを借りることができない」と、ややネガティブなニュアンスで紹介されています。しかし、友寄英哲さんや米長邦雄さんの脳波が10Hz優位であったことからも分かるように、具体的なイメージをともなう「よかった」「ありがとう」で脳波を10Hzに誘導することは、決して悪いことではありません。むしろ、人間社会で活躍するための能力発揮という観点からは、とても有益な状態と言えるくらいです。

ただし、あくまでも7.8Hzを目指すのであれば、具体的なイメージに頼ることなく、息を吸いながら「よかった」、息を吐きながら「ありがとう」を繰り返す方が、より適していると理解しておいてください。最終的には、10Hzも7.8Hzも、必要に応じて使い分けられることがベストですので、あとは日々実践あるのみです。

2025年2月

現状維持バイアス(Status Quo Bias)など、認知バイアスの観点からも取り上げられることがある、児童文学者・新美南吉さんの短編小説「おじいさんのランプ」から。全文は青空文庫で読めます。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/635_14853.html

内容を要約しておくと…

東一君という登場人物の祖父(巳之助)が若い頃のことを語る部分がメインで、タイトルの「おじいさん」とは、この祖父のこと。おじいさんは、山奥の村で育ちますが、ある日、町へ行く機会があり、そこでランプ(灯火器)と出合います。当時の村では、まだランプが珍しかったため、おじいさんは、その利便性を村人に伝え、ランプ売りとして成功していきます。ところが、時代が進み、電灯が普及するにつれて、ランプの需要は減少するわけですが、おじいさんは、当初その現実を否定します。しかし、ある出来事をきっかけとして、最終的には新しい時代の到来を受け入れることになります。

現状維持バイアス以外でも、過去の成功体験に縛られるリスクとも通じる話でしょう。また、「両利きの経営(Ambidextrous Organization)」という、経営学者の入山章栄さんが提唱した考え方に当てはめると、「知の深化(Exploitation)」と「知の探索(Exploration)」の両輪が必要ということも言えると思います。

ある時点で大成功しているほど、その時の環境に最適化している可能性が高まるため、環境が変われば不適応を示す危険性も高くなる。その一方、変化を追い求めれば不安定になるわけですから、現状の強みを伸ばすこと=深化と、新たな可能性を模索すること=探索とのバランスを取りながら適応していくことが重要という感じです。

ダーウィンの「適者生存」からも、ある時点の環境に最適化すると、長期的な生存においては不利になる場合があると語られています。恐竜と比べて小型(弱者)であった哺乳類の祖先が、急激な環境変化を生き延びて繁栄できた理由にも、その辺りが影響しているようです。

ここまで来ると、やはり「(適度な)ゆらぎ」が大事ということに気づかされます。それは、アルファ波であり、ゾーンであり、健康とも関連する概念で、「ゆらぎ」があるからこそ脳の消費エネルギーが低く抑えられると言われていることを踏まえても、それをどこまで制御できるかが、脳力の発揮とも関連するのではないでしょうか。

2025年1月

2025年は昭和100年だそうですね…という話はさておき、まずは、経済政策論の出発点とも言われる「ティンバーゲンの定理」と「マンデルの定理」の説明から。

ティンバーゲンの定理とは、「政策目標の数は、政策手段の数と等しくなければならない」というもの。達成したい政策目標が複数ある場合、それぞれに対応する独立した政策手段が必要であることを示しています。

マンデルの定理とは、「ある政策目標の達成には、その達成に対して最も効率的な手段を割り当てるべき」というもの。そのためには、目標を具体的に考えられるレベルまで分解し、その中で比較的効果が高く、解決(改善)が可能な部分目標から処理をしていく必要がある。そして、それらの組み合わせが、総費用を最小化することにも繋がります。

ここまで「政策目標」という表現を使ってきましたが、「(単なる)目標」と置き換えた方が分かりやすいかも知れません。そして、これらの定理を理解すると、目標達成に向けた議論の堂々巡りを避け、より効率的な目標達成および課題解決が可能になります。

具体例として「健康管理」という大目標を達成するために、1.体力を向上させる、2.体重を減らすという2つの小目標を設定したとします。ここで、1と2をまとめて達成するために「運動(だけ)をする」―これが有効な手段と言えるかどうか。ここまでの話を踏まえると、次のような手段の方が望ましいかも知れません。

目標の数と手段の数を一致させるために、運動以外の手段も取り入れる(ティンバーゲンの定理)。そこで、「体力向上」には「運動」を適用するとして、「体重減少」には「食事管理」を当てはめる(マンデルの定理)。もちろん、目標に適した手段を選ぶ必要はありますが、こちらの方が「運動はするけれども食生活は変えない」より、はるかに効果的だと思います。

その他でも、複数の目標をまるごと達成するための「一石何鳥」みたいな手段を見つけた気分になることもありますが、たいていは、ある目標のために思い付いた手段を、他の目標にも都合よく当てはめているにすぎないものです。そもそも、目標と手段を混同しているケースもありますが、中途半端な発想から生まれた手段は、どの目標に対しても不十分になるという意味では「二兎を追う者は一兎をも得ず」に近い状態と言えるでしょう。

2024年12月

2019年のラグビーワールドカップ(W杯)において、日本代表をONE TEAMにしたことでも有名な実話(とされる話)があります。

『ハンガリー軍の偵察部隊が、スイスのアルプス山脈で軍事機動演習をしていたところ、急な猛吹雪に襲われて道に迷い遭難した。いったんテントに逃げ込んだものの、吹雪は止む気配がなく、しかも誰一人として地図を持っていない。このままだと全員凍死してしまう可能性が高いという絶望的な状況の下、隊員の一人が偶然、ポケットの中に山脈の地図を見つけた。一か八かだが、その地図にわずかな望みを託し、隊長以下全員が納得の上でリスクを取り下山することを決意した。そして、猛吹雪を耐え抜いた後、地図を頼りに歩みを進めた結果、無事に野営地への生還を果たす。ところが、帰還後、上官がその地図を調べてみると、それはアルプス山脈ではなくピレネー山脈の地図であった。』

私は山に詳しくないので、アルプス山脈とピレネー山脈と聞いても、それらの特徴について思い浮かぶことは何もありません。でも、どうやらこの2つの山脈の地形には多くの共通点があるらしく、よって、絶体絶命の精神状態であれば、勘違いしてしまうのも無理はないようなのです。とはいえ、本来は無関係の地図を使ったにも関わらず、結果として下山が成功した事実には、少なからぬ幸運が働いたことは間違いないでしょう。

さて、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、これは「センスメイキング理論」の説明でしばしば使われる事例です。そして、帰還が成功した鍵は、全員が納得した上で行動した点にあると言われています。

情報の正確性にこだわるあまり、例えば、本当にアルプス山脈の地図かどうか確かめてから行動しようなどと考えていると―仮に本物のアルプス山脈の地図であったとしても―凍死していたかも知れません。

人を動かすには、情報の正確性も大事な要素であることは間違いないでしょう。しかし、それと同等か、それ以上に大きな意味を持つものは、関わる全員を納得=腹落ちさせ、同じ方向を見据えさせられるかどうか、そのリーダーシップにあるのではないか―。この逸話は、エビデンスにこだわりすぎると、新しいものを生み出せないという話とも繋がるように思います。

2024年11月

黄色い新幹線として有名なドクターイエロー。正式名称を「923形新幹線電気軌道総合試験車」と言い、線路や架線、信号設備などの状態を走行中に自動検査する車両です。東京~博多間を、「のぞみ」と同じ停車駅で1か月に3往復、「こだま」と同じ停車駅で2か月に1往復するとのことで、私も、これまでに何度か見掛けたことがあります。運行スケジュールが公表されないことも、レア度の高さに貢献しているようですね。

そのドクターイエローが、老朽化などを理由に引退すると発表されたのは2024年6月でした。現在運行している2本の車両のうち、JR東海の車両(4代目で2001年~)は2025年1月、JR西日本の車両(5代目で2005年~)は2027年が目途とのことですが、当然のごとく引退を惜しむ声が多数寄せられているそうです。

前置きが長くなりましたが、ドクターイエローには「見ると幸せが訪れる」という都市伝説?があります。同じような話は他にも聞いたことがあると思い検索してみると、ブルームーンや、さまざまな数字の組み合わせなどが出てきました。めったに出合えないことが大事な要素のようで、こういう言い伝えが本当なのかどうかは分かりませんが、仮に都市伝説だとしても、その効能はやはりあります。

ドクターイエローを見ることで「幸せが訪れる(かも)」と思えるなら、その後の時間を「なんか幸せなことが起こりそう」という気分で過ごしやすくなるはずですよね。そうして幸せへの感度が高まれば、(そうでない場合と比べて)実際に幸せを見つける可能性が高まるのも理の当然と言えるでしょう。

つまり、これは幸せに気が付きやすくするためのテクニックで、やたらと種類が多いことから考えても、人が持つ本能的な脳力の一つなのではないかと思います。見方を変えれば一種の「験担ぎ」でもありますので、どこかでドクターイエローを目にした時は、せっかく訪れた稀な機会(幸運)を利用して、素直に「幸せが訪れる(かも)」と思い、「ドクターイエロー効果」を発動させてみてはいかがでしょうか。

2024年10月

プロ野球パシフィックリーグの福岡ソフトバンクホークスが、4年ぶりにリーグ優勝しました。

福岡ソフトバンクホークスといえば、今シーズンから小久保裕紀監督、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)の体制に変わり、1年目での優勝という素晴らしい成績でした。御二方ともMWT協会の初代会長である志賀一雅が、現役選手の時代からメンタルトレーナーとして関わらせていただいたという意味でも嬉しい結果です(※)。

(※)倉野コーチはMWT協会の顧問でもあります。

また、4軍の川越英隆投手コーチ(チーフ)とは、昨年インタビュー動画を収録させていただきました。

川越コーチへのインタビュー動画「ウェルネストレーニングトークvol.1」

それにしても、今年も大谷翔平選手(ロサンゼルスドジャース)の活躍はすごすぎましたね。打撃に専念した影響はあるとしても、常識とか何とか、そんなものは単なる思い込みにすぎないのだなと。野球に関心がなかったはずの友人が、会えば大谷選手の話をするようになりましたし、人々の行動を変えたところは、まさにイノベーターの本領発揮でした。

大谷選手のプレーを目の当たりにした若い世代から、どのような“非常識”プレイヤーが出て来るのか、本当に楽しみです。

最近の日本ボクシング界も、強い選手がたくさん出て来て、とても盛り上がっています。世界に目を向けても、日本の勢いは特筆もので、軽量級の中心地は日本にあると言っても過言ではありません。

この流れを作り出したのは、やはり井上尚弥選手でしょう。野球などの競技と同じように、幼い頃から英才教育を受けて来た世代が、切磋琢磨しながら全盛期を迎える年齢に達したこともあるとは思います。でも、それに加えて(orそれ以上に)、日本人も世界のトップオブトップで戦えるのだという意識の変化が大きく影響しているのではないでしょうか。

MWT協会のYouTubeチャンネルに、元OPBF東洋太平洋ライトフライ級チャンピオンで、世界タイトル挑戦経験もある升田貴久さんへのインタビュー動画を追加しました。「ウェルネストレーニングトークvol.3」として公開中ですので、ぜひアクセスしてみてください。

2024年9月

このエッセイでも、たびたび取り上げてきたMWT(Mental Wellness Training:メンタルウェルネストレーニング)ですが、現在の名称に変わる前はSRP(Self-Regulation Program:自己恒常性開発プログラム)」と呼ばれていました。どちらにしても、脳波の研究にもとづくメソッドという点に特徴がありますが、どうも、この「脳波」という言葉に少しハードルの高さを感じてしまう方がいらっしゃるようです。

MWT協会では、MWT指導者資格認定講座(2級→1級→インストラクター)というタイトルで、指導者を育成するための講座を開催していますが、それらの講座内で受講者の脳波を測ります。目的としては、どれくらいうまくトレーニング出来ているか、どういう脳の使い方をしているかなどを把握するためです。

MWTとは、脳の使い方を身に付けることでメンタルに影響を与える、いわば「脳育」トレーニングですから、脳の状態を可視化できれば、トレーニングの効果を確認しやすくなります。したがって、MWT講座における脳波測定とは、脳の使い方の特徴を知り、それを踏まえて(必要であれば)トレーニングの方向性を決めるために利用するくらいのものです(脳波について、しっかり勉強したい方にはニューロフィードバック指導者資格認定講座があります)。

「脳波」と聞くと、メンタルトレーニング(だけ)を学びたいに人には、やや大層すぎるものに感じられるかも知れません。でも、実際に脳波を測ることで、自分の感覚と脳の状態が一致しない(例:リラックスしていたつもりが、脳波的にはそうとも言えない)とか、雑念だらけの状態が如実に反映されるとか、想定外の結果に盛り上がることも多くあります。

もちろん、脳波を測定すれば、自分も他者も納得しやすくなり、説得力が生まれやすくなるところも利点の一つとは言えるでしょう。しかし、それらを抜きにしても、脳波はシンプルに面白く興味深いものであり、それでいてメンタルとも強く関わりがあるものですので、あまり難しく考えず、参考になることがあれば役立てようくらいの心持ちでいれば十分だと思います。

メンタルウェルネストレーニング指導者資格認定講座

ニューロフィードバック(脳波)指導者資格認定講座

2024年8月

「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」は、ご存じの方も多いでしょう。検索すれば、いくらでも解説が出てきますが、今では、再現性がない理論の1つとも指摘される一方、秩序を維持するために、軽微な犯罪を取り締まろうとする意図については意義があると思います。言うまでもなく、社会的コストとのバランスを考慮した上で。

しかし、だからと言って、軽度な違反に厳罰を科すのは、逆効果になるかも知れないというのが今回の主題です。

改正道路交通法の施行(2023年4月1日)により、自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されました。ただし、“努力”義務ですから、違反をしても具体的な罰則はなく、むしろ、交通事故に遭遇した場合の過失割合とか、保険の補償対象外になる危険性の方が、大きな問題なのだろうと思います(要するに、運転者の安心・安全のため)。

ここで、仮に、ヘルメット未着用に対する罰則を極めて重くすると何が起こり得るでしょう。

急いでいる時など、ついうっかりヘルメットをかぶり忘れて自転車に乗り、それを誰かに見られたとします。その時、犯人は、目撃者に危害を加えて口封じしようとしたり、危険を犯して逃げようとしたり、もしくは、目撃者による犯人への恐喝や脅迫を誘発することもあるかも知れません。つまり、より大きな犯罪を発生させる恐れがあるということです。

話は逸れますが、近年よく見かけるようになった電動キックボードも、使用時のヘルメット着用は努力義務だそうです(かぶっている人を見たことはありませんが…)。どちらかと言うと、こちらの方が危険なのでは?と思う時もありますが、自転車と比べてシェアリングサービスの利用率が高い=ビジネスが先行しているので、商売の妨げになりそうなヘルメット着用の義務化は、おそらく進まないでしょうね。

もう少し日常的なところですと、他者の行動の中に、自分の意に沿わない(でも、本人はやりたい)ものがある時、それを厳しく禁じてしまうと、その行動が表から見えなくなり(地下に潜り)、気が付かないうちに事態を悪化させる可能性が高まります。このような場合は、監視下に置きつつ、逸脱の程度を把握しながら適度な罰(注意)を与える方が、秩序を保つ上では有効ということも考えられるのです。

まとめると、量刑は段階的でなければならない、違反と罰則のバランスが重要という話でした。

2024年7月

先日、高校生から「脳波測定を体験したい」という問い合わせがありました。中学生や高校生からの問い合わせは、これまでも2年に1回くらいありましたが、脳波はマイナーな分野ですから、そう多くはないですね。

貴重な機会ですから、どうして体験したいと思ったのかを尋ねたところ、授業の課題で睡眠について調べていたら「α(アルファ)波」に興味がわいてきたとのことでした。何はともあれ、若い人に興味を持ってもらえるのは嬉しいことですし、出来る限り協力したいなとは思っています。

脳波の講座などでも説明していることですが、医学分野の脳波と工学分野の脳波では、測定の目的も解釈も異なるところがあります。アルファテックシリーズの最新機器であるアルファテック7は工学分野の脳波測定機で、脳力開発(能力開発)に適したニューロフィードバック装置として進化してきました。そのため、α波をスロー・ミッド・ファストの3種類に分けるなど、独自の視点を取り入れながら計測を積み重ねてきたわけです。

脳波測定の特性としてリアルタイム性が挙げられるため、マインドフルネス瞑想を始めとした課題遂行時の脳波を測定して、その変化を確認しながら即時対応でトレーニングに活かすのも有効な使い方の1つだと思います。これが、いわゆるニューロフィードバックトレーニングです。そう考えると、睡眠中の脳波を測定する場合でも、単に睡眠の質を評価するより、何らかの課題を実行して、その影響を確認するのも有意義な計測と言えるはずです。

さて、睡眠に関する著書として「脳は眠りで大進化する」(著者・上田泰己) が出版されました。上田先生は、20年ほど前の時点で、既に世界的にも注目される研究者でしたが、なるべく多くの時間を研究に使うためなのでしょう。この本が、ようやく初めての単著(語り下ろし)です。

脳波の話もところどころに書かれていますし、「脳は第二の心臓」という内容を含めた睡眠覚醒研究の今後の見通しについても語られています。そして、新書とはいえ手加減していない(中途半端に内容を易しくしていない)ところは、こだわりの1つなのかなと思いました。睡眠に関心がある方は、特に興味深く読むことが出来ると思います。

2024年6月

今年に入って4~5年ぶりにスマホを買い替えました。機種にもメーカーにも、ほとんどこだわりがなく、主な使用目的が情報検索で、あとは、仕事で使用する最低限のアプリをインストールしているだけですから、今回の買い替え(通算3台目)も、バッテリーの減り方が尋常ではなく早くなったなどの不具合が主な理由でした。

買い替えにあたって、古い機種から新しい機種にデータを移行しようとしたところ、メモリ容量の制限近くまで使用しているとのことで、完了までに6時間くらいかかるであろうと。原因を確認してみると―何のひねりもなく恐縮ですが―写真(と動画)でした。

プライベートでは写真を撮る習慣がなく、見返すこともあまりないため意識していませんでしたが、何やかんやで仕事中に撮り溜めていた写真が膨大にあり、クラウドでの保存量も有料版にするかどうかの一歩手前。さすがに、これは自分で整理するしかありませんから、コツコツと消去したり保管場所を変えたり、その一部を公開しているのが私のInstagramアカウントというわけです。

さて、写真だけでも相当なデータ量になるということは、人の脳の記憶容量は一体どれくらいなのだろうと思い調べてみたところ、TB(テラバイト:ギガバイトの1,000倍)とかPB(ペタバイト:テラバイトの1,000倍)などの記述が見つかりました。ただし、はっきりとした数値は(あるのかどうかも含めて)分からずじまいです。

人の記憶の特徴が「曖昧性」にあることは、ご存じの方も多いでしょう。したがって、記憶は、写真のように固定されたものではなく、思い出すたびに不安定化するものであり、ゆえに、時間が経つにつれて記憶の内容や意味も変化します。また、記憶の再生は無意識でも起こるため、多くの記憶(経験)を持ち、それらが自動的かつ自由に結び付きやすい脳の使い方をしている人ほど、ふとした瞬間のひらめきや直感、創造力も発揮しやすくなるようです。

一方で、記憶を組み合わせるだけの創造(想像)なら、人よりも処理能力が高いAIに分があるとも言えます。現に、囲碁や将棋の棋士は、もうAIに敵わなくっているようですしね。しかし、少なくとも現在のAIには欲求がありません。その理由の一つとして身体(性)の欠如を挙げることができますが、それに対して、人には身体があり、身体に基づく欲求があります。そこから、身体(性)が再評価されている昨今です。

創造性を高めるための、もう一つの効果的な方法は、出合いの場を作ること。それは、モノでもコトでも、もちろん人でも構いませんが、特に、新しい経験や、自分とは異なる思考パターンを持つ人との出会いが重要でしょう。そう考えれば、ストレスを感じる状況でさえ、新しい発想を生み出すための有効な機会と捉えることができるはずです。