2025年は昭和100年だそうですね…という話はさておき、まずは、経済政策論の出発点とも言われる「ティンバーゲンの定理」と「マンデルの定理」の説明から。

ティンバーゲンの定理とは、「政策目標の数は、政策手段の数と等しくなければならない」というもの。達成したい政策目標が複数ある場合、それぞれに対応する独立した政策手段が必要であることを示しています。

マンデルの定理とは、「ある政策目標の達成には、その達成に対して最も効率的な手段を割り当てるべき」というもの。そのためには、目標を具体的に考えられるレベルまで分解し、その中で比較的効果が高く、解決(改善)が可能な部分目標から処理をしていく必要がある。そして、それらの組み合わせが、総費用を最小化することにも繋がります。

ここまで「政策目標」という表現を使ってきましたが、「(単なる)目標」と置き換えた方が分かりやすいかも知れません。そして、これらの定理を理解すると、目標達成に向けた議論の堂々巡りを避け、より効率的な目標達成および課題解決が可能になります。

具体例として「健康管理」という大目標を達成するために、1.体力を向上させる、2.体重を減らすという2つの小目標を設定したとします。ここで、1と2をまとめて達成するために「運動(だけ)をする」―これが有効な手段と言えるかどうか。ここまでの話を踏まえると、次のような手段の方が望ましいかも知れません。

目標の数と手段の数を一致させるために、運動以外の手段も取り入れる(ティンバーゲンの定理)。そこで、「体力向上」には「運動」を適用するとして、「体重減少」には「食事管理」を当てはめる(マンデルの定理)。もちろん、目標に適した手段を選ぶ必要はありますが、こちらの方が「運動はするけれども食生活は変えない」より、はるかに効果的だと思います。

その他でも、複数の目標をまるごと達成するための「一石何鳥」みたいな手段を見つけた気分になることもありますが、たいていは、ある目標のために思い付いた手段を、他の目標にも都合よく当てはめているにすぎないものです。そもそも、目標と手段を混同しているケースもありますが、中途半端な発想から生まれた手段は、どの目標に対しても不十分になるという意味では「二兎を追う者は一兎をも得ず」に近い状態と言えるでしょう。