環境や才能、収入や資産の違いなど、「世の中は不平等だ」と感じることは、誰にでもあるのではないでしょうか。しかし、格差の「ない」状態よりも「ある」状態の方が、実は「安定」であり、よって、仮に初期段階で「機会の平等」を設定したとしても、「結果の不平等」は必ず生じてしまうもの。その背景には「エントロピー増大の法則」があります。

「エントロピー」とは、「ばらつき」や「散らかり具合」を表す概念ですが、直感的に理解するために、コップにインクを垂らす場面を想像してみましょう。すると、最初は一点に集中していたインクが、時間が経つにつれて全体に広がっていくはずです。このように、整った状態よりも、ばらついた状態へと向かう流れが自然界にはあり、それを「エントロピーは増大する」と表現します。

この法則を、お金の世界に当てはめるために、今度は、次のようなゲームを想定してみましょう。このゲームは、全員が同じ金額を持つところからスタートします。その後、参加者の中からランダムに2人を選び、彼らの所持金をまとめ、(サイコロを振るなど方法は何でも構いませんが)再びランダムに分配することを繰り返します。

ルールそのものには、誰に対する有利も不利もないはずのゲームですが、しばらく続けていると次第に偏りが大きくなり、少数の「お金をたくさん持つ人」と、多数の「ほとんど持たない人」に分かれていきます。これが、エントロピー増大の法則から導かれる結果です。

全員が同じ状態というのは不自然で崩れやすいため、そこにランダムなやり取りを加えると、より分散した(多様な)状態=格差のある状態へと移行します。そして、一度ばらつきが大きくなると、再び平等な状態に戻ることは、通常なかなか起こりません。

現実社会にも、この法則は当てはまり、よい結果を得た人は、次の機会でも有利な機会を得やすくなるため、さらに格差は拡大し、エントロピーは増大していきます。つまり、格差とは、誰かが作り出した「異常な」状態ではなく、何も手を加えないと生まれる「自然な」状態というわけです。したがって、平等を保とうとするのであれば、自然の流れに逆らう意図的な仕組みと継続的な関与が必要と言えます(来月に続く)。