先日、高校生から「脳波測定を体験したい」という問い合わせがありました。中学生や高校生からの問い合わせは、これまでも2年に1回くらいありましたが、脳波はマイナーな分野ですから、そう多くはないですね。
貴重な機会ですから、どうして体験したいと思ったのかを尋ねたところ、授業の課題で睡眠について調べていたら「α(アルファ)波」に興味がわいてきたとのことでした。何はともあれ、若い人に興味を持ってもらえるのは嬉しいことですし、出来る限り協力したいなとは思っています。
脳波の講座などでも説明していることですが、医学分野の脳波と工学分野の脳波では、測定の目的も解釈も異なるところがあります。アルファテックシリーズの最新機器であるアルファテック7は工学分野の脳波測定機で、脳力開発(能力開発)に適したニューロフィードバック装置として進化してきました。そのため、α波をスロー・ミッド・ファストの3種類に分けるなど、独自の視点を取り入れながら計測を積み重ねてきたわけです。
脳波測定の特性としてリアルタイム性が挙げられるため、マインドフルネス瞑想を始めとした課題遂行時の脳波を測定して、その変化を確認しながら即時対応でトレーニングに活かすのも有効な使い方の1つだと思います。これが、いわゆるニューロフィードバックトレーニングです。そう考えると、睡眠中の脳波を測定する場合でも、単に睡眠の質を評価するより、何らかの課題を実行して、その影響を確認するのも有意義な計測と言えるはずです。
さて、睡眠に関する著書として「脳は眠りで大進化する」(著者・上田泰己) が出版されました。上田先生は、20年ほど前の時点で、既に世界的にも注目される研究者でしたが、なるべく多くの時間を研究に使うためなのでしょう。この本が、ようやく初めての単著(語り下ろし)です。
脳波の話もところどころに書かれていますし、「脳は第二の心臓」という内容を含めた睡眠覚醒研究の今後の見通しについても語られています。そして、新書とはいえ手加減していない(中途半端に内容を易しくしていない)ところは、こだわりの1つなのかなと思いました。睡眠に関心がある方は、特に興味深く読むことが出来ると思います。