メンタルトレーニング

2023年2月

保育園に子供を預けている保護者は、定刻までに子供を迎えに来るわけですが、もし、遅刻をする保護者が多い場合、どのような対策を講じて行動変容を促そう(定刻に来てもらおう)とするでしょうか?

ここでは、カリフォルニア大学サンディエゴ校の、ウリ・ニーズィー教授の研究をもとに話を進めます。

この研究によると、保育園側が講じた対策は罰金を科すことでした。それによって、「遅刻をしてしまった!」という心理的負担+経済的負担というダブルの負担を負わせて、遅刻を減らそうとしたわけです。その結果、保護者の行動は確かに変容しました。ただし、保育園側の意図とは正反対の方向に。つまり、罰金制度を設けた結果、遅刻をする保護者が、むしろ増えてしまったということですが、なぜ、そのようなことが起きたのでしょうか。

罰金は、当然「罰」ですから、ルールを設定して、違反した人に経済的負担を科すものです。しかし、ルールというものは、もともと気にしない保護者には効力がありませんし、もともと倫理観が強い保護者には意味がありません(「遅刻は良くない」と伝えるだけで十分です)。したがって、罰金制度による影響を強く受けるのは、「みんなが守っているから、自分も守っておこうかな」という態度の保護者であると考えられます(往々にして最もボリュームが多いゾーンでもあります)。

罰金制度が設けられる以前、定刻を越えて預かるのは、あくまでも保育園側の厚意であったため、遅刻をした保護者は、「申し訳ない」などの心理的負担を抱えることがありました。そこに罰金が設定されると、預かり時間の延長が、保育園側の厚意から、お金で時間を買う行為に変わります。つまり、「たとえ遅刻をしても、お金を払う以上は正当な権利」のように、保護者の心理的負担を、経済的負担に変えてしまいました(保育園側が意図した、心理的負担+経済的負担にはなりませんでした)。

保育園側は自分たちの失敗に気が付き、すぐに罰金制度を廃止しましたが、時すでに遅し。一度、預かり時間の延長を経験した保護者は、罪悪感なく遅刻を繰り返すようになり、歯止めが利かなくなってしまったそうです。「もし遅刻を減らしたいなら、罰金制度を復活させれば良いじゃない」ということですね(そうすれば、お金を払いたくない保護者は遅刻をしなくなる)。 罰を与えることで行動変容を促すのは、思い付きやすいアイディアだと思いますが、予期せぬ行動を促したり、かえってモラルや規範が崩壊したりする恐れもあるという事例です。

2022年11月

YouTubeのメンタルウェルネストレーニング協会チャンネルで「志賀式実践メンタルトレーニング」の音源をリリース開始しました。全15種類のプログラムを、おおよそ週1回ペースで公開していく予定ですので、完了は来年1月くらいになると思います。最終プログラムが「成功・開運のプログラム」(予定)のため、追加される音源を順次実践していくと、新年にぴったりの、めでたい1月を迎えられるはずです!

メンタルウェルネストレーニング(MWT)は、文部科学省委託事業としてスタートしたため、朝礼や授業前などの短時間で実践できるよう、目安3分の設定で各プログラムを作り直しましたが、オリジナルのメンタルトレーニングとしては、約10分~30分以上の本格的なプログラムまであります。取り組む時間が長いほど、トレーニングの効果を発揮しやすいわけではないのですが、私がメンタルトレーニングを学び始めた約20年前は、長尺のフルバージョンも含まれていましたし、MWT(協会)の認知度を高める意味でも、音源を公開する運びとなりました。

これから公開する予定の「蓮の花になる瞑想(ロータス・メディテーション)」など、MWTと比較すると、だいぶ濃い目なプログラムもありますが、個人的には、どれも懐かしいものばかりです。

このプログラム全体のキャッチフレーズは「成功という階段を駆け上がるチャンス」。脳力を引き出し、現実を夢に近づけ、人生を大きく変えるためのトレーニングとして作られていますので、皆様にも、ぜひ実践して頂きたい内容です。当プログラムの創始者・志賀一雅の声による誘導と(アルファ波を誘発する)アルファ音楽を聞きながらの実践という点では、MWTと異なる趣の新鮮なトレーニング体験にもなると思います。

エッセイ執筆時点(11/8)の公開音源

・Session2 呼吸とリラクゼーション

・Session3 リラックスの強化

・Session4 自由連想

・Session5 アルファ波のコントロール

・Session6 アルファ波の強化

※ Session1は諸事情により非公開です。

既に公開中のMWTと同様、末永くご活用ください。

2022年7月

メンタルウェルネストレーニング(MWT)協会では、今年から沖縄の定期講座を開始しました。3月のビジョントレーニング2級、6月のビジョントレーニング1級が終了して、9月には再びビジョン2級を開催する予定です。

さて、私の生まれ育ちが東京だからでしょうか、沖縄(のような自然環境が豊かな地域)では、屋外で遊ぶ子供が多いのだろうと(だいぶ前まで)勝手に思っていたのですが、必ずしもそうとは言えないようですね。

そもそも暑くて外に出たくない(出られない)という理由もあるのかも知れませんが、沖縄に行くといつも思うのは、外を歩いている人が少ないなぁということ。移動手段=電車中心である東京の場合、駅間を移動したり乗り継ぎをしたりするのに、どうしてもある程度は歩く必要があります(“ある程度”ですから、十分かどうかとは別問題ですが)。

ところが、移動手段は自動車がメイン、徒歩数分のコンビニに行くにも車を使うとなると、歩くこと自体が少なくなりますよね…というのは、ほんの一例ですが、動く生き物である“ヒト”から動く機会が失われれば、単なる運動不足だけでなく、そこから派生する問題も色々と増えて来そうな気がします。

ヒトの成長には、大まかに、遺伝50%、経験50%が関与するとも言われていて、後者の「経験」は「環境」と言い換えることも出来ますが、その「環境」には、いわゆる自然環境だけでなく、生育環境や家庭環境のようなものも含まれます。

動物としてのヒトの発育・成長には、動きによる学び≒体験が不可欠で、これから社会が、どのように変化して行くのか分かりませんが、たとえ大きな変化が起こるとしても、ヒトというシステムに必須な体験まで、大きく変わることは考えにくいでしょう。

「環境」が変わり、「動き」の機会が失われたなら、そこに対して「遊び」からのアプローチを試みる。これが、MWT協会が提供するビジョントレーニングでもあります。

2022年4月

株式会社 脳力開発研究所の創業者である志賀一雅のもとで、現役時代からメンタルトレーニングを実践されている倉野信次さん(株式会社 FOR ONE COMPANY/元・福岡ソフトバンクホークス投手統括コーチ)が、ご著書を上梓されました。

「魔改造はなぜ成功するのか」(KADOKAWA)

武田翔太はなぜ伸びた?

千賀滉大のどこに注目した?

努力を引き出す育成論

指導者としての考え方や態度など、参考になることが、たくさん書かれています。ぜひご一読ください。

https://www.shinji-kurano41.com/

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今回は、イエール大学のウルゼスニフスキー博士が、米国科学アカデミー紀要に発表した論文から。

①内発的動機

例)好きだからする、他の何かでは代替できない

②外発的動機

例)具体的な目標のためにする、他の何かでも代替できる

※以下では「動機」と「モチベーション」を同義で使います。

米国陸軍士官学校(ウェストポイント)の士官候補生1万人以上を対象とした、14年にわたる調査によると、士官(将校)を志した理由で

①>②の場合(内発的動機が強い)と

①<②の場合(外発的動機が強い)を比べると

前者の場合の方が、将校に出世できる確率が約1.5倍高く、その後の5年間、仕事を辞めずに続けられた人の数も約2倍多かったのだそうです。

よって、能力発揮やモチベーション維持などの観点からは、①内発的動機の方が望ましいというのが、ひとまずの結論。

でも、「動機」は、①②どちらか一方だけではなく、併存する場合もあるのでは?その場合はどうなの?という疑問もあり得るところ、それに対するウルゼスニフスキー博士の回答は次の通り。

①内発的動機が強くても、②外発的動機を多く持っていると、将校になる確率が約20%下がる。

②の“多く”というのが大事なところですが 、その場合、気落ちがブレやすくなるとか、おおよそ、そんなことが理由で下がってしまうようなのです。「なるほど」と思えるのは、外発的動機の多くは、個人的な“欲”から生まれるものだったりしますのでね。

ここから例えば、純粋に好きという気持ちに基づいて行動できれば、目標を達成する確率は上がるし、達成した目標が持続する確率も上がるという結論が導かれるわけですが…

長くなりましたので、ここまでの内容を踏まえた上で、次回もう少し先に話を進めてみようと思います。

2021年11月

前回の続きで、ダイエットの話から再開します。

痩せよう(体重を減らそう)とする場合、モチベーションに頼るのであれば、目標を定めて、期間を決めて、そこにスペシャルなメニューを投入して数値を合わせる。まさに減量という表現がピッタリだと個人的には思います。ただし、目標達成後の認知的コスト、心理的コスト、金銭的コストetc.とにかくコストが膨大に掛かるため、維持・継続が困難で、いずれ元の状態に戻ってしまう人も多いのではないでしょうか。

一方、同じく痩せようとする場合でも、モチベーション云々とは無関係に、習慣を見直すのであれば、減量ではなく、ダイエットとか、そういう表現の方が適当だと思います。こちらで痩せるのは、あくまでも結果論であり、最も重要なのは、行動パターンの変化ですね。

上の例は、ダイエットに限らず、その他の色々なことにも当てはまると思いますが、何かを止めるとか、頑張って続けるとか、いずれにしても強い意志を要することは、継続という観点からみると不都合で、意志力という貴重な資源の無駄使いにもなるため、長期的に望ましい方法とは言えません。

(意志力を発揮したり、判断力の行使を繰り返したりしていると、認知機能の疲労から、次第に精度が落ちていくようです。)

多くの人は、毎日歯を磨きますよね。なぜでしょう?

スッキリするから?

気持ちは分かりますが、それが最大の理由ですか?

エチケットのため?

他人と会わずに過ごす日でも歯を磨く人が多いのでは?

虫歯や病気を防ぐため?

1日さぼるくらいなら大丈夫では?(多分)

本当の答えは、毎日やっていることだからとか、磨いた方が良い気がするからとか、理由と呼べるほどのものが有るような無いような、そんな何となくの繰り返しが続いているということなのだと思います。当然、ここには明確なモチベーション≒意志力はなく、だからこそ、毎日続けられているという方が、より現実に近いのではないでしょうか。

継続は力なりが真だとすると、長期的な継続のために不可欠なことは、モチベーションを高めるよりも、モチベーションを伴わない習慣化=行動パターンの形成にあるはずです。これが、いわゆるルーティン化と呼ばれるもので、ここまで至れば、当初に掲げた目標は自ずと達成されやすくなるでしょう。

2020年9月

「メンタルトレーニングで集中力を鍛えられますか?」と尋ねられることがありますが、答えは当然「鍛えられます」。

メンタルトレーニングに限らず、トレーニングと呼ばれる方法は、基本的にどなたかが発見した理論をもとに作られているため、その解釈に誤解がなければ、理論から導かれる効果は、多かれ少なかれ誰でも出せるはずです。

余談ですが、完全オリジナルみたいに語られるトレーニング法は(それが本当にオリジナルだとしても)、基礎をなす理論そのものがオリジナルなわけではなく、既存理論の組み合わせ方がオリジナルということであり(そのメソッドの開発者自身が基礎研究までしていれば別ですが)、よって、発揮される効果そのものが画期的というよりも、効果の発揮されやすさが変わるくらいの話に落ち着くわけです。

したがって、目的が決まり、その時々の状態を正確に把握できれば、いま必要とされる実践内容は、おのずと決まってしまいます。もし、効果が出るかどうか分からないけど、とにかくやってみようというのであれば、それは気合か根性もしくは実験の話であって、それをトレーニングとは呼びません。

集中力に限らず、リラクセーションやポジティブ思考などについてもトレーニングすることは可能ですが、より確実に効果を出したいのであれば、自分一人の視点だけではなく、信頼のおける客観的な視点が必要で、それがトレーナーのもとで学ぶ利点の一つなのだと思います。一人で悶々と抱えている行き詰まりも、意外とあっさり解消されるかも知れませんよ。

2020年6月

コロナウイルスの感染も一段落と言えるのかどうか、少しずつ日常が戻りつつあるようですが、これまでお伝えしてきた通り、メンタルトレーニングで自己免疫力を高めることは、自分のためにも、自分と関わる人のためにも、この先も続けて頂きたいと思います。

ここからは宣伝です。

5/22(金)~、その後は隔週金曜日の13時~、「レモンさんのビタミンラジオ局」というFacebook内のラジオ局で、番組名「HARMANS. Radio」を担当することになりました。13時~というのは、配信開始が13時~ということですが、月額888円の有料会員にお申し込み頂くと、他のパーソナリティの方の過去の放送分を含めて、全番組を視聴可能です。

5/22の初回放送は無料配信しています。

https://www.facebook.com/groups/free.vitamin/?post_id=2644727899146342

◉ レモンさんのビタミンラジオ局 オフィシャルサイト

https://vitamin-radio.com/

◉ レモンさんオフィシャルサイト

http://lemonsan.com/

約40名のパーソナリティの皆様がいらっしゃるようで(2020年6月時点)、私は、一応メンタルトレーナーという立場で約30分間しゃべっています。 かれこれ15年担当している学校の授業や、メンタルウェルネストレーニング協会主催の講座では、資料をもとに話をするのが私のスタイルではありますが、この番組に関しては、あまり細かいことを決めず、しゃべりながらまとめていこうかなと考えています。もしよろしければ、耳を傾けてみてください!

2020年5月

GWが過ぎた今も、緊急事態宣言は解除されず、この生活が今月末まで続くことになるのかも知れません。

MWT協会の東京事務所がある五反田も、東京2020を目途に建設したと思われる駅直結の商業施設兼ホテルがあるのですが、その商業施設側が、開業、即臨時休業(ホテルは一応営業しているようですが、ほぼ開店休業状態)。そして、同時に改装工事を行っていた駅ビルは、新装オープン予定日を過ぎた今も休業中です。

これだけ世界中にウイルスが蔓延した以上、既に完全撲滅は難しいと思われる中、今は感染拡大そのものよりも、それにともなう医療崩壊を食い止めることが喫緊の課題というところでしょうか。どちらにしても、三密(密閉・密集・密接)を避けることに加えて、自分の免疫力を低下させないこと、更には高めておくことも重要と言えます。

ごく基本的なこととして、心理的ストレスは免疫力を低下させます。つまり、不安や不満という意識が強まれば、心理的に苦しむだけではなく、病原体に対する生体の抵抗力も低下してしまうのです。 ウイルスとの共生は、人類が受け入れていかなければいけない現実的課題です。私たちに出来ることの一つは、自己免疫力を高めることであり、それは、メンタルトレーニングに課せられた大切な役割でもあると思います。

2020年4月

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急事態宣言が発令されることになりました。働き方改革の議論が遠い過去のことに感じられるくらい、ガラリと働き方が変わった方も多くいらっしゃると思います。100年に一度といわれる今回の感染症が、社会の仕組みも大きく変えた出来事として、歴史に刻まれることになるのかも知れません。

このような状況では、自由に移動できず友人にも会いづらい、いつまで続くか分からないから計画も立てづらいなど、気を紛らわすことも難しくなってしまいますが、こういう時だからこそ、GCN瞑想に参加して心の繋がりと平安を感じてみてはいかがでしょうか。

http://gcn.alphacom.co.jp/

また、YouTubeのメンタルウェルネストレーニング協会チャンネルでは、メンタルトレーニングの音源も公開しています。テレワークの合間などに、気分転換や休憩も兼ねて実践してみてください。

https://www.youtube.com/channel/UCkhUqp-CeMZMoyVB_xVcojw

不安やストレスを引きずれば、その意識の矛先は自分に向いてしまいます。感染拡大を抑えるための正しい対策を取ることは、もちろん大事ですが、自分の気持ちもきちんと慰撫しながら、いつか必ず落ち着く時がくる今の状況を乗り越えていきましょう。

2020年2月

ゾーン、フローと呼ばれる状態があります。簡単に言うと、時間を忘れて行為に没頭している“超集中状態”で、能力を最大限に発揮できる状態のことですが、この時の脳波には諸説があり、評価が定まっていません。“その瞬間”の脳波を計測するのが難しいという、そもそもの問題もありますが、少ない諸説の共通点を挙げてみると、どうやら、深いリラックスと高い覚醒を表す脳波が同時に強く計測される状態のようです。

個人的な見解としては、深いリラックスだけ、高い覚醒だけという単一の優勢状態は日常的にも起こり得るため、ゾーン、フローには、それらが併存した、ある種の変性意識状態が必要だと思っています。

高い覚醒も必要ということは、交感神経が強く働くための刺激=ストレスも必要という考え方ですが、そのまま緊張状態に終始するだけでは、能力発揮を阻害する要因にしかなりません。重要なことは、ストレス(覚醒)からリラックスへの切り替えを、どれだけ早く確実に行えるかであり、そのためには日々の準備が必要、つまりメンタルトレーニングの実践が必要ということです。 メンタルウェルネストレーニングでは、トレーニングを実践するだけでは分かりにくい具体的な脳の状態を、脳波を指標としてリアルタイムに観察します。また、前頭葉(Fp1、Fp2)から脳波を取得するため、主に意識活動に関わる脳の働きを観察するわけですが、人間にとって、能力発揮に対する最大の障壁は“意識”です。その“意識”との折り合い方を学ぶことは、メンタルトレーニングにおける最大の課題でもあります。