メンタルトレーニング

2022年4月

株式会社 脳力開発研究所の創業者である志賀一雅のもとで、現役時代からメンタルトレーニングを実践されている倉野信次さん(株式会社 FOR ONE COMPANY/元・福岡ソフトバンクホークス投手統括コーチ)が、ご著書を上梓されました。

「魔改造はなぜ成功するのか」(KADOKAWA)

武田翔太はなぜ伸びた?

千賀滉大のどこに注目した?

努力を引き出す育成論

指導者としての考え方や態度など、参考になることが、たくさん書かれています。ぜひご一読ください。

https://www.shinji-kurano41.com/

**********

今回は、イエール大学のウルゼスニフスキー博士が、米国科学アカデミー紀要に発表した論文から。

①内発的動機

例)好きだからする、他の何かでは代替できない

②外発的動機

例)具体的な目標のためにする、他の何かでも代替できる

※以下では「動機」と「モチベーション」を同義で使います。

米国陸軍士官学校(ウェストポイント)の士官候補生1万人以上を対象とした、14年にわたる調査によると、士官(将校)を志した理由で

①>②の場合(内発的動機が強い)と

①<②の場合(外発的動機が強い)を比べると

前者の場合の方が、将校に出世できる確率が約1.5倍高く、その後の5年間、仕事を辞めずに続けられた人の数も約2倍多かったのだそうです。

よって、能力発揮やモチベーション維持などの観点からは、①内発的動機の方が望ましいというのが、ひとまずの結論。

でも、「動機」は、①②どちらか一方だけではなく、併存する場合もあるのでは?その場合はどうなの?という疑問もあり得るところ、それに対するウルゼスニフスキー博士の回答は次の通り。

①内発的動機が強くても、②外発的動機を多く持っていると、将校になる確率が約20%下がる。

②の“多く”というのが大事なところですが 、その場合、気落ちがブレやすくなるとか、おおよそ、そんなことが理由で下がってしまうようなのです。「なるほど」と思えるのは、外発的動機の多くは、個人的な“欲”から生まれるものだったりしますのでね。

ここから例えば、純粋に好きという気持ちに基づいて行動できれば、目標を達成する確率は上がるし、達成した目標が持続する確率も上がるという結論が導かれるわけですが…

長くなりましたので、ここまでの内容を踏まえた上で、次回もう少し先に話を進めてみようと思います。

2021年11月

前回の続きで、ダイエットの話から再開します。

痩せよう(体重を減らそう)とする場合、モチベーションに頼るのであれば、目標を定めて、期間を決めて、そこにスペシャルなメニューを投入して数値を合わせる。まさに減量という表現がピッタリだと個人的には思います。ただし、目標達成後の認知的コスト、心理的コスト、金銭的コストetc.とにかくコストが膨大に掛かるため、維持・継続が困難で、いずれ元の状態に戻ってしまう人も多いのではないでしょうか。

一方、同じく痩せようとする場合でも、モチベーション云々とは無関係に、習慣を見直すのであれば、減量ではなく、ダイエットとか、そういう表現の方が適当だと思います。こちらで痩せるのは、あくまでも結果論であり、最も重要なのは、行動パターンの変化ですね。

上の例は、ダイエットに限らず、その他の色々なことにも当てはまると思いますが、何かを止めるとか、頑張って続けるとか、いずれにしても強い意志を要することは、継続という観点からみると不都合で、意志力という貴重な資源の無駄使いにもなるため、長期的に望ましい方法とは言えません。

(意志力を発揮したり、判断力の行使を繰り返したりしていると、認知機能の疲労から、次第に精度が落ちていくようです。)

多くの人は、毎日歯を磨きますよね。なぜでしょう?

スッキリするから?

気持ちは分かりますが、それが最大の理由ですか?

エチケットのため?

他人と会わずに過ごす日でも歯を磨く人が多いのでは?

虫歯や病気を防ぐため?

1日さぼるくらいなら大丈夫では?(多分)

本当の答えは、毎日やっていることだからとか、磨いた方が良い気がするからとか、理由と呼べるほどのものが有るような無いような、そんな何となくの繰り返しが続いているということなのだと思います。当然、ここには明確なモチベーション≒意志力はなく、だからこそ、毎日続けられているという方が、より現実に近いのではないでしょうか。

継続は力なりが真だとすると、長期的な継続のために不可欠なことは、モチベーションを高めるよりも、モチベーションを伴わない習慣化=行動パターンの形成にあるはずです。これが、いわゆるルーティン化と呼ばれるもので、ここまで至れば、当初に掲げた目標は自ずと達成されやすくなるでしょう。

2020年9月

「メンタルトレーニングで集中力を鍛えられますか?」と尋ねられることがありますが、答えは当然「鍛えられます」。

メンタルトレーニングに限らず、トレーニングと呼ばれる方法は、基本的にどなたかが発見した理論をもとに作られているため、その解釈に誤解がなければ、理論から導かれる効果は、多かれ少なかれ誰でも出せるはずです。

余談ですが、完全オリジナルみたいに語られるトレーニング法は(それが本当にオリジナルだとしても)、基礎をなす理論そのものがオリジナルなわけではなく、既存理論の組み合わせ方がオリジナルということであり(そのメソッドの開発者自身が基礎研究までしていれば別ですが)、よって、発揮される効果そのものが画期的というよりも、効果の発揮されやすさが変わるくらいの話に落ち着くわけです。

したがって、目的が決まり、その時々の状態を正確に把握できれば、いま必要とされる実践内容は、おのずと決まってしまいます。もし、効果が出るかどうか分からないけど、とにかくやってみようというのであれば、それは気合か根性もしくは実験の話であって、それをトレーニングとは呼びません。

集中力に限らず、リラクセーションやポジティブ思考などについてもトレーニングすることは可能ですが、より確実に効果を出したいのであれば、自分一人の視点だけではなく、信頼のおける客観的な視点が必要で、それがトレーナーのもとで学ぶ利点の一つなのだと思います。一人で悶々と抱えている行き詰まりも、意外とあっさり解消されるかも知れませんよ。

2020年6月

コロナウイルスの感染も一段落と言えるのかどうか、少しずつ日常が戻りつつあるようですが、これまでお伝えしてきた通り、メンタルトレーニングで自己免疫力を高めることは、自分のためにも、自分と関わる人のためにも、この先も続けて頂きたいと思います。

ここからは宣伝です。

5/22(金)~、その後は隔週金曜日の13時~、「レモンさんのビタミンラジオ局」というFacebook内のラジオ局で、番組名「HARMANS. Radio」を担当することになりました。13時~というのは、配信開始が13時~ということですが、月額888円の有料会員にお申し込み頂くと、他のパーソナリティの方の過去の放送分を含めて、全番組を視聴可能です。

5/22の初回放送は無料配信しています。

https://www.facebook.com/groups/free.vitamin/?post_id=2644727899146342

◉ レモンさんのビタミンラジオ局 オフィシャルサイト

https://vitamin-radio.com/

◉ レモンさんオフィシャルサイト

http://lemonsan.com/

約40名のパーソナリティの皆様がいらっしゃるようで(2020年6月時点)、私は、一応メンタルトレーナーという立場で約30分間しゃべっています。 かれこれ15年担当している学校の授業や、メンタルウェルネストレーニング協会主催の講座では、資料をもとに話をするのが私のスタイルではありますが、この番組に関しては、あまり細かいことを決めず、しゃべりながらまとめていこうかなと考えています。もしよろしければ、耳を傾けてみてください!

2020年5月

GWが過ぎた今も、緊急事態宣言は解除されず、この生活が今月末まで続くことになるのかも知れません。

MWT協会の東京事務所がある五反田も、東京2020を目途に建設したと思われる駅直結の商業施設兼ホテルがあるのですが、その商業施設側が、開業、即臨時休業(ホテルは一応営業しているようですが、ほぼ開店休業状態)。そして、同時に改装工事を行っていた駅ビルは、新装オープン予定日を過ぎた今も休業中です。

これだけ世界中にウイルスが蔓延した以上、既に完全撲滅は難しいと思われる中、今は感染拡大そのものよりも、それにともなう医療崩壊を食い止めることが喫緊の課題というところでしょうか。どちらにしても、三密(密閉・密集・密接)を避けることに加えて、自分の免疫力を低下させないこと、更には高めておくことも重要と言えます。

ごく基本的なこととして、心理的ストレスは免疫力を低下させます。つまり、不安や不満という意識が強まれば、心理的に苦しむだけではなく、病原体に対する生体の抵抗力も低下してしまうのです。 ウイルスとの共生は、人類が受け入れていかなければいけない現実的課題です。私たちに出来ることの一つは、自己免疫力を高めることであり、それは、メンタルトレーニングに課せられた大切な役割でもあると思います。

2020年4月

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急事態宣言が発令されることになりました。働き方改革の議論が遠い過去のことに感じられるくらい、ガラリと働き方が変わった方も多くいらっしゃると思います。100年に一度といわれる今回の感染症が、社会の仕組みも大きく変えた出来事として、歴史に刻まれることになるのかも知れません。

このような状況では、自由に移動できず友人にも会いづらい、いつまで続くか分からないから計画も立てづらいなど、気を紛らわすことも難しくなってしまいますが、こういう時だからこそ、GCN瞑想に参加して心の繋がりと平安を感じてみてはいかがでしょうか。

http://gcn.alphacom.co.jp/

また、YouTubeのメンタルウェルネストレーニング協会チャンネルでは、メンタルトレーニングの音源も公開しています。テレワークの合間などに、気分転換や休憩も兼ねて実践してみてください。

https://www.youtube.com/channel/UCkhUqp-CeMZMoyVB_xVcojw

不安やストレスを引きずれば、その意識の矛先は自分に向いてしまいます。感染拡大を抑えるための正しい対策を取ることは、もちろん大事ですが、自分の気持ちもきちんと慰撫しながら、いつか必ず落ち着く時がくる今の状況を乗り越えていきましょう。

2020年2月

ゾーン、フローと呼ばれる状態があります。簡単に言うと、時間を忘れて行為に没頭している“超集中状態”で、能力を最大限に発揮できる状態のことですが、この時の脳波には諸説があり、評価が定まっていません。“その瞬間”の脳波を計測するのが難しいという、そもそもの問題もありますが、少ない諸説の共通点を挙げてみると、どうやら、深いリラックスと高い覚醒を表す脳波が同時に強く計測される状態のようです。

個人的な見解としては、深いリラックスだけ、高い覚醒だけという単一の優勢状態は日常的にも起こり得るため、ゾーン、フローには、それらが併存した、ある種の変性意識状態が必要だと思っています。

高い覚醒も必要ということは、交感神経が強く働くための刺激=ストレスも必要という考え方ですが、そのまま緊張状態に終始するだけでは、能力発揮を阻害する要因にしかなりません。重要なことは、ストレス(覚醒)からリラックスへの切り替えを、どれだけ早く確実に行えるかであり、そのためには日々の準備が必要、つまりメンタルトレーニングの実践が必要ということです。 メンタルウェルネストレーニングでは、トレーニングを実践するだけでは分かりにくい具体的な脳の状態を、脳波を指標としてリアルタイムに観察します。また、前頭葉(Fp1、Fp2)から脳波を取得するため、主に意識活動に関わる脳の働きを観察するわけですが、人間にとって、能力発揮に対する最大の障壁は“意識”です。その“意識”との折り合い方を学ぶことは、メンタルトレーニングにおける最大の課題でもあります。

2019年4月

私が代表を務める「脳力開発研究所」では、長年にわたり、脳波を指標としたメンタルトレーニング(メンタルウェルネストレーニング)の研究&開発を進めています。一昨年には、最新のニューロフィードバック装置「アルファテック7」を完成させ、従来よりも詳細な信号データの取得が可能になりました。そのおかげで、メンタルトレーニングに対する考え方も、脳波に対する考え方も、ここ数年で確実に進歩しています。

そこで、近年増加傾向のオンライン学習とあいまって、メンタルトレーニングや脳波に関する情報を、より早く、より多くの皆様と共有するためのWEB勉強会をスタートさせました。

 メンタルウェルネストレーニング(MWT)WEB勉強会

 ニューロフィードバック(脳波)WEB勉強会

 もちろん、ビジョントレーニングのWEB勉強会も開催中です。

 指導者のためのビジョントレーニングフォローミーティング

参加は基本的に申込制で、協会員の方は無料、一般の方は有料(2千円+税)ですが、各トレーニングを2か月に一度くらいの頻度でスケジューリングしていますので、最新情報を得たい方などは積極的にご参加ください。質疑応答の時間もあります。

2019年3月

MWT協会が提供する脳力トレーニングでは、脳力(能力)を高めることと併せて、本来の脳力(能力)をきちんと発揮できるようにすることも重視しています。

ここでの脳力とは、脳の働きのこと。そして、トレーニングとしては、メンタルトレーニング(メンタルウェルネストレーニング)とビジョントレーニングを中心にお伝えしていますが、メンタルにしてもビジョンにしても、煎じ詰めれば脳の働きのことで、当然、お互いに関連し合っています。そのため、メンタルに課題があればビジョンにも影響が出やすく、ビジョンに課題があればメンタルにも影響が出やすくなるというわけです。

もちろん、自分をモニタリングするという意味では、脳波(ニューロフィードバック)も重要でしょう。セルフコントロールの基本はセルフモニタリングにありますし、メンタルウェルネストレーニング自体、元々は脳波の研究から生まれたトレーニングですので。

「身心両面からのアプローチで本来の脳力に磨きをかける」。強い忍耐力を要するようなトレーニングでは、長続きしにくいと感じる方も多いでしょうから、どのトレーニングも楽しみながら取り組めるように工夫しています。興味がある方は、ぜひご参加ください。

2018年9月

ニッチな話かも知れませんが、高校野球(硬式)の投手の球数制限に関する意見を結構よく耳(目)にします。以前、メンタルウェルネストレーニング(MWT)協会の研究会でも触れたことがある話題でして、少々気になったため、簡単に私見を述べさせて頂きます。ちなみに私は、球数制限ありに賛成派です。

球数制限なし派の意見としては、「体力の限界を超えて頑張る姿が感動に繋がる」「苦しい状況を乗り越えることで忍耐力が身につく」などが、比較的多数を占めるかと思います。

「感動」という見解に対しては、観戦する側のエゴという応答で十分でしょう。また、「忍耐力」というのは、確かにその通りですが、それは他のことでも身につけられるものであり、ゆえに、球数制限不要論を支える強力な根拠にはなり得ません。そもそも、球数が増えることで身体の負担が増すことの危険性を議論しているわけですから、論点がズレていますし、これこそ根性論に繋がる発想のような気がします。

個人的には、球数制限を設けることで、より多くの選手(生徒)に試合への出場機会が与えられる方が、本来は教育の一環である部活動の存在意義にも適っていると思います。また、一部のスター選手(生徒)に頼れなくなるのであれば、皆で力を合わせざるを得なくなるため、結果的にチームワークの重要性が増すはずです。そして、球数制限がある中で、どう試合を進めるかという点では、監督や選手を含めたチーム全体としての戦い方を明確にする必要性が生じるため、今まで以上に、日頃からの意思疎通が大切になるでしょう。 制約条件を最大限に利用しながら、望む結果に結びつける経験を積む方が、社会に出る準備としても役立つように思うのですが、それにしても、つくづく日本人は根性論が好きなんだなぁと感じる一件です。こうなってくると、誕生の経緯に根性論へのアンチテーゼ的な意味合いを持つメンタルトレーニングの出番、ですかね。