脳波測定

2024年7月

先日、高校生から「脳波測定を体験したい」という問い合わせがありました。中学生や高校生からの問い合わせは、これまでも2年に1回くらいありましたが、脳波はマイナーな分野ですから、そう多くはないですね。

貴重な機会ですから、どうして体験したいと思ったのかを尋ねたところ、授業の課題で睡眠について調べていたら「α(アルファ)波」に興味がわいてきたとのことでした。何はともあれ、若い人に興味を持ってもらえるのは嬉しいことですし、出来る限り協力したいなとは思っています。

脳波の講座などでも説明していることですが、医学分野の脳波と工学分野の脳波では、測定の目的も解釈も異なるところがあります。アルファテックシリーズの最新機器であるアルファテック7は工学分野の脳波測定機で、脳力開発(能力開発)に適したニューロフィードバック装置として進化してきました。そのため、α波をスロー・ミッド・ファストの3種類に分けるなど、独自の視点を取り入れながら計測を積み重ねてきたわけです。

脳波測定の特性としてリアルタイム性が挙げられるため、マインドフルネス瞑想を始めとした課題遂行時の脳波を測定して、その変化を確認しながら即時対応でトレーニングに活かすのも有効な使い方の1つだと思います。これが、いわゆるニューロフィードバックトレーニングです。そう考えると、睡眠中の脳波を測定する場合でも、単に睡眠の質を評価するより、何らかの課題を実行して、その影響を確認するのも有意義な計測と言えるはずです。

さて、睡眠に関する著書として「脳は眠りで大進化する」(著者・上田泰己) が出版されました。上田先生は、20年ほど前の時点で、既に世界的にも注目される研究者でしたが、なるべく多くの時間を研究に使うためなのでしょう。この本が、ようやく初めての単著(語り下ろし)です。

脳波の話もところどころに書かれていますし、「脳は第二の心臓」という内容を含めた睡眠覚醒研究の今後の見通しについても語られています。そして、新書とはいえ手加減していない(中途半端に内容を易しくしていない)ところは、こだわりの1つなのかなと思いました。睡眠に関心がある方は、特に興味深く読むことが出来ると思います。

2023年12月

2023年も、多くの方が脳波測定の体験にお越しくださいました。グループ企業である(株)脳力開発研究所が開発・販売しているアルファテック7を使い、およそ1時間の中で、説明や質疑応答などをおこないます。ご興味がある方は↓よりお申し込みください。

https://nouhasokutei.jp/taiken.html

これまで、このエッセイの中でも、脳波を測ると分かることについて色々と紹介して来ましたが、ある分野のエキスパートと初心者(非エキスパート)では脳の使い方が異なるというのも、そのうちの一つです。例えば、同じ作業をしていても、エキスパートの方が圧倒的に速いというようなことは、皆様にも経験があると思います。では、圧倒的に速い=それだけ脳も激しく活動していると言えるのでしょうか?

エキスパートと初心者が同じことをしていて、ある程度の時間が経過した後、疲労を感じやすいのは、どちらでしょう?おそらく、初心者ではないでしょうか?疲労を感じやすいのは、脳波の周波数も電圧も高く、基本的には脳が激しく活動している時です。そして、ここには「意識的」な情報処理が関わると考えられています。

エキスパートと初心者では、同じ作業をするにしても、意識で処理する情報量が圧倒的に異なります。「意識下」で処理するエキスパート(豊富な経験に基づく長期記憶があるため)と、「意識」で処理する初心者(経験に基づく長期記憶がないため)の違いですが、当然のこととして、意識で処理する情報量が増えるほど多くのエネルギーを使うことになり、結果として、周波数も電圧も上がりやすく、疲労も感じやすくなります(スピードも落ちます)。

このような結果を示す事例は数多く存在しますが、私が計測したものの一つは、演奏時における、プロのミュージシャンと、その生徒の違いでした。プロの方は、ミッドアルファ波を中心に電圧は低め、つまり静かな状態でしたが、生徒は、ミッドアルファ波にファストアルファ波とベータ波が混ざる状態で電圧も高め、いかにも一生懸命演奏している状態を表していました。言うまでもなく、演奏そのものはプロの方が心地よかったわけですが。

これは、演奏に限らず、あらゆる作業に当てはまることであり、本番で能力を存分に発揮できない方は、このあたりの脳の使い方に課題があるのかも知れません。したがって、技術的な練習はもちろんのこと、その成果を最大限に発揮したいのであれば、脳波を指標に脳の使い方を練習することも対策の一つだと思います。そして、そのための方法を体系的に学べるプログラムが「メンタルウェルネストレーニング」です。