脳波ニューロフィードバック装置「アルファテック7」は、脳波をリアルタイムでモニターしながら脳活動の自己制御を試みる「ニューロフィードバック」トレーニングにも使える装置です。なお、「ニューロフィードバック」のための装置は脳波計に限らず、fMRI(機能的核磁気共鳴画像法)が使用されることもあります。
また、計測された脳の活動パターンをもとに、どのような刺激が提示されたのかを推定する手法として「デコーディング」というものがあります。
今回は、この「デコーディング」と、fMRIによる「ニューロフィードバック」を組み合わせて(デコーデット・ニューロフィードバック:DecNef)、特定の脳活動パターンを生み出すように訓練した、ATR脳情報通信総合研究所の柴田和久研究員らによる実験を紹介しましょう。
この実験では、まず、色々な角度の縞模様を被験者に見てもらい、同時にfMRIデータを取得します。そのデータをデコーディングして、各々の縞模様に対する脳活動パターンを抽出しました。
続いて、色々な縞模様の中から、ある特定の縞模様を選び、その縞模様を見ている時の脳活動を被験者に再現してもらいますが、この時、被験者本人は、何に関わる脳活動を再現するのかも知らされないまま実験に参加したのだそうです。被験者に与えられるフィードバックは、(何だか分からないけど)正解に近い脳活動を再現できているかどうかの成績のみ。したがって、何が評価されているのかも分からない中、とにかく、成績が向上するように試行錯誤したというわけです。
被験者の視点に立つと、なかなかつかみどころがない気もしますが、しかしながら、この訓練を約10日間続け、脳活動パターンを示す成績が向上するようになると、特定の角度の縞模様を知覚する能力が向上しました。
当然ですが、この実験期間中、被験者は、特定の縞模様を繰り返し見たわけではありませんし、そもそも、イメージすらしていないでしょう。それにも関わらず、ある縞模様を、他の角度(傾き)の縞模様よりも上手に見分けられるようになったという結果でした。
さすがに、ここまで精緻な評価にもとづくニューロフィードバックトレーニングは、アルファテック7では出来ません。それでも、脳の使い方に関しては、アルファテック7の使用でも十分に評価できますし、脳の使い方をトレーニングするだけでも、新たな能力を身に付けられたという意味では興味深い実験結果だと思います。