2025年2月

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

現状維持バイアス(Status Quo Bias)など、認知バイアスの観点からも取り上げられることがある、児童文学者・新美南吉さんの短編小説「おじいさんのランプ」から。全文は青空文庫で読めます。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/635_14853.html

内容を要約しておくと…

東一君という登場人物の祖父(巳之助)が若い頃のことを語る部分がメインで、タイトルの「おじいさん」とは、この祖父のこと。おじいさんは、山奥の村で育ちますが、ある日、町へ行く機会があり、そこでランプ(灯火器)と出合います。当時の村では、まだランプが珍しかったため、おじいさんは、その利便性を村人に伝え、ランプ売りとして成功していきます。ところが、時代が進み、電灯が普及するにつれて、ランプの需要は減少するわけですが、おじいさんは、当初その現実を否定します。しかし、ある出来事をきっかけとして、最終的には新しい時代の到来を受け入れることになります。

現状維持バイアス以外でも、過去の成功体験に縛られるリスクとも通じる話でしょう。また、「両利きの経営(Ambidextrous Organization)」という、経営学者の入山章栄さんが提唱した考え方に当てはめると、「知の深化(Exploitation)」と「知の探索(Exploration)」の両輪が必要ということも言えると思います。

ある時点で大成功しているほど、その時の環境に最適化している可能性が高まるため、環境が変われば不適応を示す危険性も高くなる。その一方、変化を追い求めれば不安定になるわけですから、現状の強みを伸ばすこと=深化と、新たな可能性を模索すること=探索とのバランスを取りながら適応していくことが重要という感じです。

ダーウィンの「適者生存」からも、ある時点の環境に最適化すると、長期的な生存においては不利になる場合があると語られています。恐竜と比べて小型(弱者)であった哺乳類の祖先が、急激な環境変化を生き延びて繁栄できた理由にも、その辺りが影響しているようです。

ここまで来ると、やはり「(適度な)ゆらぎ」が大事ということに気づかされます。それは、アルファ波であり、ゾーンであり、健康とも関連する概念で、「ゆらぎ」があるからこそ脳の消費エネルギーが低く抑えられると言われていることを踏まえても、それをどこまで制御できるかが、脳力の発揮とも関連するのではないでしょうか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。