他者の行動を見ていると、こちらの思い通りにいかないどころか、意図とは真逆の結果が出てしまうことも、おそらくあるのではないかと思います。今回は、そういった現象を理解するためのヒントとして、「逆選択」と「モラルハザード」の話から始めてみましょう。
まずは、逆選択について。
中古車市場における売り手と買い手を比較した場合、売り手(現所有者)の方が車の状態を詳しく把握しています。こういう情報の非対称性がある時、質の高い車の持ち主は売るのをためらいがちになり、結果、市場には質の低い車が集まりやすくなるというのが、いわゆる「レモン市場」です。
また、保険市場では、リスクが高い(不健康な)人ほど保険に加入するインセンティブが高く、リスクが低い(健康な)人ほどインセンティブが低い。当然ですが、保険会社は損をしたくないので、保険料の値上げで対策しようとすると、ますます健康な人が離れ、リスクの高い人だけ残る。
これらが、代表的な「逆選択」の例です。
一方、モラルハザードは、保険に入ったことで安心すると、多少は無理をしても大丈夫と運転や健康管理が雑になる現象のことで、結果として事故や病気のリスクが上がります。
この2つに共通しているのは「インセンティブの歪み」ですが、これをメンタル関連の話題につなげると、どのようなことが言えるのでしょうか。
比較的よく耳にするであろうものは、「結果ばかりを評価しているとチャレンジしなくなる」という感じかと思いますが、スポーツであれば「勝ったら褒める」、勉強であれば「点数が高かったら褒める」みたいな感じのことです。もちろん、褒める側に評価の意図はないのかもしれませんし、もっと頑張ってもらいたいという純粋な思いから褒めているケースもあるのかもしれませんが、ここでポイントとなるのは、「勝ったら」とか「高かったら」という部分。
このような条件を付けると、「失敗しないこと」が最大のインセンティブになり、結果として、「ミスを避け」「安全なプレーばかりを選択し」「難しいことに挑戦しない」行動を促す可能性があります。場合によっては、ウソをつくことに最大のメリットを見出すかもしれません。
ここから、「アンダーマイニング効果」や「グッドハートの法則」の話に展開していくつもりですが、文字数も増えてきたので、続きは次月以降に書こうと思います。

