2018年2月

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平昌冬期五輪が開催されるタイミングに合わせて、五輪を中心にスポーツとメンタルトレーニングに関する内容です。

スポーツ分野のメンタルトレーニングが、宇宙飛行士養成訓練の内容から応用されたというのは、よく知られた話。

地球人にとって最も異質な環境は、地球外の宇宙空間であり、仮に、そこでパニックを起こした場合の危険度は、地球内(上?)の比ではありません。そのため、1950年代のソビエト連邦(旧ソ連)で、宇宙飛行士を対象とした緊張・不安などを解消するための心理的自己統制トレーニングが採用されました。

そのトレーニングを、アスリートとコーチ用に体系化して、組織的に指導したのがスポーツメンタルトレーニングの起こりと言われています。

なお、この分野の現在のトップランナーはアメリカ合衆国で、その理由はNASAの研究が進んでいるからだそうですが、宇宙開発との深い関係は、今も変わらないというところでしょうか。

 話を戻して、1957年から、旧ソ連では国家プロジェクトとして、トップアスリートに対する心理面の強化などを目的としたトレーニングが開始されます。その成果は、1960年のローマ五輪におけるメダル獲得数に表れました。

1960年(夏季)イタリア:ローマ五輪メダル獲得数

順位国・地域合計
1ソビエト連邦432931103
2アメリカ合衆国34211671
3イタリア13101336
4東西統一ドイツ12191142
5オーストラリア88622
6トルコ7209
7ハンガリー68721
8日本47718
9ポーランド461121
10チェコスロバキア3238

1956年(夏季)オーストラリア:メルボルン五輪メダル獲得数

順位国・地域合計
1ソビエト連邦37293298
2アメリカ合衆国32251774
3オーストラリア1381435
4ハンガリー910726
5イタリア88925
6スウェーデン85619
7東西統一ドイツ613726
8イギリス671124
9ルーマニア53513
10日本410519

1952年(夏季)フィンランド:ヘルシンキ五輪メダル獲得数

順位国・地域合計
1アメリカ合衆国40191776
2ソビエト連邦22301971
3ハンガリー16101642
4スウェーデン12131035
5イタリア89421
6チェコスロバキア73313
7フランス66618
8フィンランド631322
9オーストラリア62311
10ノルウェー3205

その後、1970年代~1980年代にかけて、同様のトレーニングが東欧諸国にも広がり、1976年のモントリオール五輪におけるメダル獲得に大きく貢献しました【※1】。

1976年(夏季)カナダ:モントリオール五輪メダル獲得数

順位国・地域合計
1ソビエト連邦494135125
2東ドイツ40252590
3アメリカ合衆国34352594
4西ドイツ10121739
5日本961025
6ポーランド761326
7ブルガリア69722
8キューバ64313
9ルーマニア491427
10ハンガリー451322

1972年(夏季)西ドイツ:ミュンヘン五輪メダル獲得数

順位国・地域合計
1ソビエト連邦50272299
2アメリカ合衆国33313094
3東ドイツ20232366
4西ドイツ13111640
5日本138829
6オーストラリア87217
7ポーランド75921
8ハンガリー6131635
9ブルガリア610521
10イタリア531018

【※1】なお、アフリカ22か国が人種隔離政策(アパルトヘイト)に関わる問題で、また、中国が台湾に関わる問題で、それぞれ大会をボイコットしています。

 1980年代に入ると、西側諸国でも、アスリートの強化・育成に向けたメンタルトレーニングが導入されます。

 一例として、1982年、アメリカ五輪委員会が、メンタルトレーニングを専門としたスポーツ心理学者を雇用して、各競技団体に1名ずつ配置する「エリート・アスリート・プロジェクト」をスタートさせます。その成果は、1984年のロサンゼルス五輪における大躍進に繋がりました【※2】。

1984年(夏季)アメリカ合衆国:ロサンゼルス五輪メダル獲得数

順位国・地域合計
1アメリカ合衆国836130174
2ルーマニア20161753
3西ドイツ17192359
4中国158932
5イタリア1461232
6カナダ10181644
7日本1081432
8ニュージーランド81211
9ユーゴスラビア74718
10韓国66719

1980年(夏季)ソビエト連邦:モスクワ五輪メダル獲得数

順位国・地域合計
1ソビエト連邦806946195
2東ドイツ473742126
3ブルガリア8161741
4キューバ87520
5イタリア83415
6ハンガリー7101532
7ルーマニア661325
8フランス65314
9イギリス57921
10ポーランド3141532

【※2】ただし、モスクワ五輪もロサンゼルス五輪も、冷戦の影響で多くの国が大会をボイコットしたため、単純な比較は出来ません。

日本の状況については、次回のエントリーでまとめる予定です。

平昌五輪に出場する選手の活躍を祈念するとともに、各選手が、どうメンタルを調整して競技に臨むのかという点にも、ぜひご注目ください。

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