ある治療法について、「この治療を受けた人の90%が生存します」と説明された場合と、「この治療を受けた人の10%が亡くなります」と説明された場合。数字が示す内容は同じだとしても、「90%が生存」と言われた方が、なんとなく安心できるのではないでしょうか。

このように、私たちは数字や事実を機械的に理解するだけではなく、それがどのような「枠組み(フレーム)」で提示されたのかということからも影響を受けます。これが、心理学や行動経済学で言うところの「フレーミング効果」で、有名な研究としては、心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによる「アジア病問題」を挙げることができるでしょう。

600人が死亡すると予想される感染症への対策を選ぶ場面で

対策Aでは「200人が助かる」
対策Bでは「3分の1の確率で600人が助かるが、3分の2の確率で誰も助からない」

このような選択肢が提示された場合、Aを選ぶ人が72%、Bを選ぶ人が28%という結果でした。

これに対して

対策Cでは「400人が亡くなる」
対策Dでは「3分の1の確率で誰も亡くならず、3分の2の確率で全員が亡くなる」

このような選択肢が提示された場合、Cを選ぶ人が22%、Dを選ぶ人が78%という結果でした。

実質的には同じことを意味する選択肢であっても、「助かる」という利益のフレームではリスクを避けて確実性を好み、「亡くなる」という損失のフレームではリスクを取る傾向が強まったわけですが、こうしたフレーミング効果は、日常でもよく見られるものです。先ほどの「成功率90%」と「失敗率10%」はもちろん、「80%の人が改善した」と「20%の人が改善しなかった」でも受ける印象が変わるように。

また、自分自身に対して使う言葉でも似たようなことが起こります。大切な場面で、「ミスをしないように」と考えるのか、「自分のプレーに集中しよう」と考えるのか。緊張したとき、「緊張したらダメだ」と捉えるのか、「身体が本番に向けて準備を始めた」と捉えるのか。

このように、どのフレームから現実を眺めるのかによって、感情や行動が変わる可能性があります。だからこそ、一つの見方だけを絶対的なものと決めつけず、「別の見方をすると、どう見えるのだろう?」と考える姿勢が大切で、それが、自分自身のフレームに気がつくきっかけにもなるのです。そして、変化は気がつくことから始まります。