2020年3月

食事、運動、睡眠と言われるように、身体を動かすことが健康に良いという話は、誰でも耳にしたことがあると思います。それが本当かどうか、1953年に報告された、モーリス博士によるロンドンの2階建てバスの運転手と車掌を比較した研究を紹介しましょう。

運転手は、運転をすることが第一の仕事であり、必然的に着席している時間が長くなります。一方、車掌は、(当時は)車内で切符を売る仕事があったため、1階と2階を行き来することが多くなります。その違いが心臓発作と心臓病による死亡率に、どう影響するかを調べたのが、この研究ですが、結果は…

運転手の方が、死亡率が高く(心臓発作は約1.4倍/心臓病は約2.2倍)、特に55歳以降で、その違いが顕著になりました。ちなみに、35歳~64歳を対象として、10歳ごとにグループ分けをした結果だそうです。

その違いの大きな原因は、運転手の運動不足にあり、よって、運動不足では心臓の病気(特に肥満から循環器系の疾患)になりやすい。しかも、年齢が上がるほど、その影響は大きくなると、ひとまず結論づけられています。とはいえ、この場合の主な運動とは階段の上り下りのことですから(それなりに疲れますけど)、普段の生活の中でマメに身体を動かすのは大事だよね、くらいの話なのだと思います。「動」く生き「物」の宿命として。

ただ、何でもそうなのでしょうけど、嫌々、我慢して、無理に運動しているようでは、かえってストレスから不健康になることもありそうです。やはり、何をするにしても基本は「期待感」と「満足感」であり、好きなことを気持ちよくやるのに勝る健康法はないと思います。そして、「期待感」と「満足感」の感じやすさはトレーニングで鍛えられる脳力(脳の働き)ですから、きちんと訓練すれば、誰でも、その感度を高めることが出来ます。

もし、楽しいことが見つからないのだとすれば、それは、本当に楽しいことがないのではなく、楽しいと感じられる自分がいないだけかも知れません。ちなみに、ワクワク、夢中になっている時の脳波ではα波が増えることも確認済みです。 「期待感」と「満足感」の感度を高めるためにも、メンタルウェルネストレーニングを実践して、心身ともに健康な毎日を過ごせるようになりましょう。

2020年2月

ゾーン、フローと呼ばれる状態があります。簡単に言うと、時間を忘れて行為に没頭している“超集中状態”で、能力を最大限に発揮できる状態のことですが、この時の脳波には諸説があり、評価が定まっていません。“その瞬間”の脳波を計測するのが難しいという、そもそもの問題もありますが、少ない諸説の共通点を挙げてみると、どうやら、深いリラックスと高い覚醒を表す脳波が同時に強く計測される状態のようです。

個人的な見解としては、深いリラックスだけ、高い覚醒だけという単一の優勢状態は日常的にも起こり得るため、ゾーン、フローには、それらが併存した、ある種の変性意識状態が必要だと思っています。

高い覚醒も必要ということは、交感神経が強く働くための刺激=ストレスも必要という考え方ですが、そのまま緊張状態に終始するだけでは、能力発揮を阻害する要因にしかなりません。重要なことは、ストレス(覚醒)からリラックスへの切り替えを、どれだけ早く確実に行えるかであり、そのためには日々の準備が必要、つまりメンタルトレーニングの実践が必要ということです。 メンタルウェルネストレーニングでは、トレーニングを実践するだけでは分かりにくい具体的な脳の状態を、脳波を指標としてリアルタイムに観察します。また、前頭葉(Fp1、Fp2)から脳波を取得するため、主に意識活動に関わる脳の働きを観察するわけですが、人間にとって、能力発揮に対する最大の障壁は“意識”です。その“意識”との折り合い方を学ぶことは、メンタルトレーニングにおける最大の課題でもあります。

2020年1月

ニューロフィードバック指導者講座(https://mentalwellness.jp/kouza/neurofeedback/)でも使用している、脳波測定機「アルファテック7」には、コヒーレンスという評価項目があります。これは、同時に取得した2つの信号(左脳と右脳の脳波など)の関係を表すものですが、コヒーレンスを評価できる簡易型の脳波計は、今のところ「アルファテック7」だけだと思います。

脳波は振幅する波形で表現され、2つの波形の動きが一致しているほどコヒーレンス率が高くなり、一方、2つの波形がズレるほどコヒーレンス率が低くなります。そして、コヒーレンス率が高い状態を「位相が揃っている」「位相が同じ」「同位相」などと呼びます。

色々な脳波を計測してみると、コヒーレンス率が高いほど、左右脳のバランスが良く、本来の脳力を発揮しやすいようですが、時々、位相が逆転する=逆位相になるケースがあります。逆位相は、コヒーレンスではないという意味でインコヒーレンスという分類の中に含まれますが、この状態の評価が定まっていません。

これまで、逆位相が多く観察されたのは、集中力が切れた時や抑圧傾向の強い時など、求めている状態と現状とのズレが大きい時という共通点があったように思います。

周波数帯域という脳波の種類(β波、α波など)や、7.8Hz、10Hzという特定の周波数から一歩進んで、コヒーレンスも評価できるようになると、より詳しい状態を見極められるようになります。読み解く項目が増えると、慣れるまでは難しく感じるかも知れませんが、だからこそ面白みが増えるとも言えますので、ぜひチャレンジしてみてください。

2019年12月

師走に入り、忙しくされている方も多いと思いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回は「ビジョントレーニング」をテーマに話をしようと思います。

というわけで早速ですが、突然の暗闇が訪れた時、皆様は、どのような行動を取るでしょうか。そこが慣れた場所であれば、得られる触覚情報から早い段階で空間イメージを構築できると思いますが、慣れない場所であれば、ある程度の時間をかけて周囲の物に触れても、なかなか明確な空間イメージを構築できないと思います。

もちろん、触覚情報の解像度という個人差も影響するとは思いますが、いずれにしても、探索行動をもとに空間イメージを構築しながら、空間における自分の位置を把握しようとするはずです。

一方、明るい光の下、目を開けてモノを見ている時は、視覚情報を中心に、空間イメージ及びそれとの関係を理解していますが、当たり前に思っている、その「見え方」にも、実は一人ひとり小さな、場合によっては大きな違いがあります。

他人の視覚体験を共有することが出来ないため、どうしても見落としてしまいがちですが、自分以外の他人が、どういう視覚認識に基づいて世界を把握しているのか、少なくとも今は、それを完全版として知り得る手段がありません。

人間の感覚機能は、身体の経験=体験を通じて、学び、身に付け、向上させるものです。したがって、体験が豊富な人ほど、自分自身とも、自分を取り巻く世界とも、上手に折り合いを付けやすい一方、体験が乏しい人ほど、自分とも世界とも、うまく折り合いを付けられず、かといって、それを明確な言葉にすることも難しく、漠とした不全感を抱えながら日々を過ごす可能性が高くなります。

人間の基盤は身体であり、その先に脳があります。したがって、豊富な身体経験こそ、最大限に脳力を発揮するための不可欠な要素であり、それをサポートする実践的な方法がビジョントレーニングというわけです。 来る2020年、オリパライヤーでもある節目の年に、さらに多くの皆様に満足して頂けるコンテンツを提供できるよう精進して参ります。来年もよろしくお願い致します。

2019年11月

ストレスと聞いた時、どのようなことが思い浮かぶでしょうか。

好ましくないもの?避けたいもの?

ストレスを感じることは、自分の生命を守るためにも大切な脳力です。また、ストレスを乗り越えることや乗り越えようと努力することが、個体の成長に繋がります。

一方、ストレスを感じる脳のシステムが、あまりにも頻繁に作動すれば、毎日がストレスで溢れかえり、その結果、些細なことに気(エネルギー)を取られ、肝心なことに目を向けられず、勉強も仕事も効率が落ちることでしょう。

つまり、ストレスを、成長を妨げる障害と受け止めるのか、成長をもたらすチャレンジと受け止めるのか、その違いが重要で、その違いをもたらす脳の反応が分かれ目になるのだろうと思います。

もちろん、リフレーミングなどの理性的な対処法もありますが、理性の力に頼るだけで十分かというと、何とも心許ない気がします。本質は、やはり脳の反応にあるため、どのような対処法を使うにしても、その方法自体に面白みを感じているかどうかが鍵で、言い換えると、入力された信号を面白がる信号に変換するコンバーターとして機能するなら、リフレーミングなどの手法も効果を発揮し得るというところでしょう。

スキルは、あくまでもスキルであり、主体は自分(の脳)にあるわけですから、色々なテクニックとMWTを組み合わせることで、それらの効果もより一層高まるだろうという、MWTの強みは触媒機能に(も)ありみたいな話でした。

2019年10月

脳力(脳の働き)と言われた時、何を思い浮かべるでしょうか。

ざっと検索してみると、記憶力、判断力、思考力、創造力、学習能力など、まぁだいたいそんな感じかなという言葉で説明されることが多いようです。

脳波研究にもとづくメンタルウェルネストレーニング(MWT)では

① ケガや病気を防ぐ、あるいは回復させる

② 能力発揮態勢を作る(ここに上記の“○○力”が含まれる)

③ 危険から身を守る

以上の3項目に注目したトレーニング法を紹介しています。

そして、上記①~③は、それぞれ特定の脳波と結び付く傾向が強いため、MWTと脳波のフィードバックトレーニング(ニューロフィードバックトレーニング)を組み合わせると、具体的に変化を確認しながらトレーニングに励むことが出来るという仕組みです。

肉体的成長 → 精神的成長 → 知的成長 → 創造的成長

成長にともない求める価値が変わるため、その価値を実現するための意識と無意識が期待感や満足感を作り、自発的な活動を生み出す原動力になります。

したがって、喜びや満足を求めて素直に行動すれば、価値ある人生を送れる上に、心と身体の健康も手に入れられる…はずですが、そこに、ままならない歪が生じているのが現代なのかと思います。 トレーニングを通じて、脳に備わる本来の機能を発揮させること。その結果として、一人ひとりの幸福に貢献すること。これが、MWT協会の活動を通じて実現したいことです。

2019年9月

前回のエントリーでは、脳力(脳の働き)には、生まれ付きの部分と身に付けていく部分があり、脳の使い方に属する後者はトレーニング(経験)次第である。そして、そのためのトレーニング法をまとめたものが、メンタルウェルネストレーニング(MWT)であるという話をしました。今回は、そのMWTのエッセンスを少し紹介しようと思います。

MWTで目指していることは、期待感と満足感の反射形成です。

普段、期待感と満足感を感じるのは、どのような時でしょうか。おそらく、楽しみにしていることがあったり、楽しいと思えることがあったりというように、具体的な出来事に対する応答として感じることが多いのではないでしょうか。

もちろん、そのような反応としてでも、きちんと期待感と満足感を感じられるのであれば、それはそれで良いことだと思います。

ただし、具体的な「何か」を拠り所としているばかりだと、その「何か」があるから期待感と満足感を感じられる、視点を変えると、「何か」に主導権を握られていることになり、自分自身の脳力としては少し頼りなくも感じられます。

そこで、主導権を取り戻す意味でも、日常生活の中にトレーニングを取り入れて、期待感と満足感に対する感度を高めることからMWTはスタートします。

このトレーニングを継続していくと、やがて期待感と満足感が先行するようになり、身の回りで起こる多くの出来事がワクワク、イキイキ、理屈を超えてポジティブな日々に変わり始めます。

プラス(ポジティブ)に考える理由、マイナス(ネガティブ)に考える理由、色々あるとしても、それらはきっと後付けであって、実際には、脳がそう反応したことに対する、理性が下した受け入れやすい回答に過ぎないのではないかと個人的には思います。 そして、期待感と満足感が先行する状態で日々を送っている人の脳波を計測すると、「アルファ波」が多いというのが、よくある傾向です。脳の働きと心身のコンディションには強い相関があるため、脳と心身を併せた、総合的なアプローチによるトレーニングが大事ということを表しているのだと思います。

2019年8月

前回のエントリーでは

価値ある人生を送るための必要十分条件

・リラックス

・集中

・イメージ

・満足感(願望+確信+期待感)

という話をしました。

イメージと満足感は、主観的に確認しやすいと思いますが、リラックスと集中は、何となく分かりにくいかも知れません。本当にリラックスできているのか、集中できているのか。

とはいえ、リラックスと集中は、どちらも、価値ある人生を送るための必要条件であると同時に、十分条件の満足感(願望+確信+期待感)に繋がる重要な要素でもあります。そこで、それらの状態を「脳波」で視覚化するのが、メンタルウェルネストレーニング(MWT)です。

これまで、色々な分野で活躍している人の脳波を測定してきた結果、リラックスかつ意識集中して能力を発揮できている場面では、ほぼ例外なく、アルファ波と呼ばれる律動的な共鳴振動波が強く計測されました。ただし、アルファ波自体は、どのような場面の脳波にも必ず含まれているため、重要なのは、その優位性や持続性、つまり、必要な場面でアルファ波状態を制御できるかどうかということです。

脳力(脳の働き)には、生まれ付きの部分と、身に付けていく部分があり、脳の使い方に属する後者は、トレーニング(経験)次第で決まります。それが、「人生には二度の誕生がある」と言える由縁です。

2019年7月

メンタルトレーニングの観点から、価値ある人生を送るための必要条件は

・リラックス

・集中

・イメージ

リラックスした集中状態で、自分が望む状態をイメージすれば良いということですが、しかし、これだけでは、ただのイメージにすぎず、実現への行動には繋がらない可能性があります。では、何が足りないのか?

価値ある人生を送るための十分条件は

・満足感

そして、満足感を引き出すための要素は

・心からの願望を胸に

・実現への確信を抱き

・期待感に対して素直な態度で行動すること

したがって、価値ある人生を送るための必要十分条件は

・リラックス

・集中

・イメージ

・満足感(願望+確信+期待感) リラックス・集中状態でイメージしたことに、満足感が伴えば、そのイメージは具体的な行動に繋がり、結果として願望を実現しやすくなります。このステップを体系的にまとめたプログラムが、メンタルウェルネストレーニング(MWT)です。

2019年6月

「人生には二度の誕生がある」

一度目は、この世に生を受けた時

二度目は、脳の働きに目を向け

それを積極的に活用しようと思った時。

二度目の誕生に足を踏み出すことは

新たな人生を歩み始めることです。

これは、メンタルウェルネストレーニング協会会長・志賀一雅の言葉ですが、ここには、人生は、一度目の誕生で決まるものではなく、自分次第で何度でも生まれ変わることが出来る。だから、一人ひとりの価値ある人生を着実に歩んでいって欲しいという思いが込められています。

では、価値ある人生への必要十分条件とは?

この問いに対する答えは、次回のエントリーで書く予定です。