住友 大我

2020年11月

中止が相次いでいたスポーツイベントが、ようやく開催されるようになりました。観客の入場制限も緩和されて、スポーツのある日常が少しずつ戻ってきているようです。

スポーツの役割をメンタル的な観点から考えると、喜び、感謝、希望、安堵、驚き、誇りなどのポジティブ感情から、怒り、イライラ、不安、恐怖、悲哀、落胆などのネガティブ感情まで、色々な感情を経験させてくれることにあります。

ネガティブ感情を含める?と思う方も、いらっしゃるかも知れませんが、色々な感情を経験するほど、クリエイティブな能力を発揮しやすくなると言われていて、どうやら、感情が動く瞬間は、何かが生まれる瞬間でもあるようです。

また、感情が大きく切り替わる瞬間にゾーン/フロー体験が生まれやすい?あるいは、ゾーン/フロー状態が幸福感と関係している?という報告もあるため、そういう意味でも、スポーツで一喜一憂する時間は大切なのだと思います。 基本的には、ネガティブからポジティブに切り替わる瞬間が鍵と言われているので、日常的にメンタルトレーニングを実践して、ポジティブ感情を強化しておくと良いでしょう。また、単に特定の競技を好きというよりも、具体的なチームや選手を好きという方が、感情は大きく動くはずです。スポーツに限った話ではありませんが、心から応援できる対象を見つけるのも有効な手段かも知れません。

2020年10月

成績の良し悪しをメンタルの問題と結び付けて、そこにばかり理由を求めようとする議論は、短絡的に感じられてしまい、あまり好きになれません。とはいえ、メンタルが安定すれば成績が安定するというのも、否定しがたい事実ではありますが。

メンタルが不安定な時などに、具体的な原因を見極めて対処するのが、いわゆる「問題解決型」アプローチです。実際のところ、問題点を把握するだけでも、メンタルは落ち着きやすく、実力も発揮しやすくなります。が、この方法には、やや理性的すぎる印象を受けてしまいます。

その点で、「片づけ」という理性的な行為を、「ときめき(Spark Joy)」という本能的な欲求に翻訳した捉え直しは、やはり上手なアプローチだったのでしょう。似たような、そこそこの“片づけ本”を見ると、理性推しのタイトルばかりですしね。

人間(だけでなく動物)は、本能的に満足する方向へ進む特性を持っています。目標達成のイメージトレーニングというのも、その機能を活用する方法であり、よって、目標達成が上手な人は、その機能を上手に使えている人ということです。 ポジティブ~ネガティブまで、メンタルの振り幅が大きいほど、そこから生まれる爆発力も大きくなるわけですが、その際のメンタルの中心軸を“喜び”に据えるのが、メンタルトレーニングの一つの役割と言えるでしょう。感情の軸が“喜び”になれば、前向きな集中力が高まり、メンタルも安定して、成績も安定しやすくなります。これが「長所進展型」と呼ばれるアプローチです。

2020年9月

「メンタルトレーニングで集中力を鍛えられますか?」と尋ねられることがありますが、答えは当然「鍛えられます」。

メンタルトレーニングに限らず、トレーニングと呼ばれる方法は、基本的にどなたかが発見した理論をもとに作られているため、その解釈に誤解がなければ、理論から導かれる効果は、多かれ少なかれ誰でも出せるはずです。

余談ですが、完全オリジナルみたいに語られるトレーニング法は(それが本当にオリジナルだとしても)、基礎をなす理論そのものがオリジナルなわけではなく、既存理論の組み合わせ方がオリジナルということであり(そのメソッドの開発者自身が基礎研究までしていれば別ですが)、よって、発揮される効果そのものが画期的というよりも、効果の発揮されやすさが変わるくらいの話に落ち着くわけです。

したがって、目的が決まり、その時々の状態を正確に把握できれば、いま必要とされる実践内容は、おのずと決まってしまいます。もし、効果が出るかどうか分からないけど、とにかくやってみようというのであれば、それは気合か根性もしくは実験の話であって、それをトレーニングとは呼びません。

集中力に限らず、リラクセーションやポジティブ思考などについてもトレーニングすることは可能ですが、より確実に効果を出したいのであれば、自分一人の視点だけではなく、信頼のおける客観的な視点が必要で、それがトレーナーのもとで学ぶ利点の一つなのだと思います。一人で悶々と抱えている行き詰まりも、意外とあっさり解消されるかも知れませんよ。

2020年8月

先日、沖縄を訪問しました。青い空と白い雲、青い海と白い砂浜、海が好きな私にとっては、とても贅沢な時間でした。

しかし、東京に戻った直後から、沖縄のコロナ感染が拡大し始めました。個人の力ではどうにもならないことを、憂えたり嘆いたりしても仕方がないのですが、観光が主要産業の地域であり、観光客が戻ってきたことを喜ぶ地元の方の声も耳にしていたため、とても残念でなりません。

いつまで続くか分からない非日常に搦め取られないためにも、こういう時だからこそ、日常のルーティンを地道に実践することが大事だと思います。MWTにおいては「思い方の練習」にあたりますが、起きて、食べて、寝てという、生きている限り繰り返される、この当たり前の日常に、今一度、心を向けましょう。

考え方によっては、何かに打ち込める時期でもあります。なかなか集中して取り組めなかったことがあれば、そのために時間を使うのも良いでしょうし、あるいは、アルファテック7を購入したけど、あまり使えていなかったという方がいらっしゃれば、じっくりと使い始めるタイミングかも知れません。

頭の中を整理して、今やるべきことを見極められると、少しは気持ちも晴れるはずです。

2020年7月

メンタルウェルネストレーニングでは、(メンタルのトレーニングという名称でありながら)メンタルというよりも脳をトレーニングします。脳育のような感じで、不安よりも期待、不満よりも満足をより強く感じられるように、期待感と満足感が高まりやすい脳を育てていきます。

不安や不満というと、何かしらストレスのような外的要因をもとに作られると思うかも知れませんが、はたしてそうなのでしょうか?例えば、同じ環境に身を置いても、不安を感じる人もいれば期待を感じる人もいる、不満を感じる人もいれば満足を感じる人もいるというように、私たちの感じ方は、私たちの脳がどう反応するかにかかっているのではないでしょうか?

自分の脳がどう反応するかは、これまでの経験(脳の使い方)に強く影響を受けています。そして、経験から強く影響を受ける=後天的な要素が大きく関わるということであり、そこから、日々のトレーニングによって、脳の使い方が変わる可能性も大いに残されているという考え方に繋がっていくわけです。

苦しい場面を乗り越えることでメンタルが鍛えられる―それはそれで一つの真実でしょう。そのためにも、では、どうすれば苦しい場面を乗り越えられるのか?乗り越えようとする気力が湧いてくるのか?

その原動力は未来への希望です。希望が実現することで、大いなる満足感を得られるという期待感が、行動へのエネルギーを生み出すのだと思います。

人の主体的な行動は、期待と満足が循環する時に発揮されやすくなります。その意味でも、メンタルウェルネストレーニングでは、期待感と満足感が高まりやすい脳の育成を目指しているのです。

2020年6月

コロナウイルスの感染も一段落と言えるのかどうか、少しずつ日常が戻りつつあるようですが、これまでお伝えしてきた通り、メンタルトレーニングで自己免疫力を高めることは、自分のためにも、自分と関わる人のためにも、この先も続けて頂きたいと思います。

ここからは宣伝です。

5/22(金)~、その後は隔週金曜日の13時~、「レモンさんのビタミンラジオ局」というFacebook内のラジオ局で、番組名「HARMANS. Radio」を担当することになりました。13時~というのは、配信開始が13時~ということですが、月額888円の有料会員にお申し込み頂くと、他のパーソナリティの方の過去の放送分を含めて、全番組を視聴可能です。

5/22の初回放送は無料配信しています。

https://www.facebook.com/groups/free.vitamin/?post_id=2644727899146342

◉ レモンさんのビタミンラジオ局 オフィシャルサイト

https://vitamin-radio.com/

◉ レモンさんオフィシャルサイト

http://lemonsan.com/

約40名のパーソナリティの皆様がいらっしゃるようで(2020年6月時点)、私は、一応メンタルトレーナーという立場で約30分間しゃべっています。 かれこれ15年担当している学校の授業や、メンタルウェルネストレーニング協会主催の講座では、資料をもとに話をするのが私のスタイルではありますが、この番組に関しては、あまり細かいことを決めず、しゃべりながらまとめていこうかなと考えています。もしよろしければ、耳を傾けてみてください!

2020年5月

GWが過ぎた今も、緊急事態宣言は解除されず、この生活が今月末まで続くことになるのかも知れません。

MWT協会の東京事務所がある五反田も、東京2020を目途に建設したと思われる駅直結の商業施設兼ホテルがあるのですが、その商業施設側が、開業、即臨時休業(ホテルは一応営業しているようですが、ほぼ開店休業状態)。そして、同時に改装工事を行っていた駅ビルは、新装オープン予定日を過ぎた今も休業中です。

これだけ世界中にウイルスが蔓延した以上、既に完全撲滅は難しいと思われる中、今は感染拡大そのものよりも、それにともなう医療崩壊を食い止めることが喫緊の課題というところでしょうか。どちらにしても、三密(密閉・密集・密接)を避けることに加えて、自分の免疫力を低下させないこと、更には高めておくことも重要と言えます。

ごく基本的なこととして、心理的ストレスは免疫力を低下させます。つまり、不安や不満という意識が強まれば、心理的に苦しむだけではなく、病原体に対する生体の抵抗力も低下してしまうのです。 ウイルスとの共生は、人類が受け入れていかなければいけない現実的課題です。私たちに出来ることの一つは、自己免疫力を高めることであり、それは、メンタルトレーニングに課せられた大切な役割でもあると思います。

2020年4月

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、緊急事態宣言が発令されることになりました。働き方改革の議論が遠い過去のことに感じられるくらい、ガラリと働き方が変わった方も多くいらっしゃると思います。100年に一度といわれる今回の感染症が、社会の仕組みも大きく変えた出来事として、歴史に刻まれることになるのかも知れません。

このような状況では、自由に移動できず友人にも会いづらい、いつまで続くか分からないから計画も立てづらいなど、気を紛らわすことも難しくなってしまいますが、こういう時だからこそ、GCN瞑想に参加して心の繋がりと平安を感じてみてはいかがでしょうか。

http://gcn.alphacom.co.jp/

また、YouTubeのメンタルウェルネストレーニング協会チャンネルでは、メンタルトレーニングの音源も公開しています。テレワークの合間などに、気分転換や休憩も兼ねて実践してみてください。

https://www.youtube.com/channel/UCkhUqp-CeMZMoyVB_xVcojw

不安やストレスを引きずれば、その意識の矛先は自分に向いてしまいます。感染拡大を抑えるための正しい対策を取ることは、もちろん大事ですが、自分の気持ちもきちんと慰撫しながら、いつか必ず落ち着く時がくる今の状況を乗り越えていきましょう。

2020年3月

食事、運動、睡眠と言われるように、身体を動かすことが健康に良いという話は、誰でも耳にしたことがあると思います。それが本当かどうか、1953年に報告された、モーリス博士によるロンドンの2階建てバスの運転手と車掌を比較した研究を紹介しましょう。

運転手は、運転をすることが第一の仕事であり、必然的に着席している時間が長くなります。一方、車掌は、(当時は)車内で切符を売る仕事があったため、1階と2階を行き来することが多くなります。その違いが心臓発作と心臓病による死亡率に、どう影響するかを調べたのが、この研究ですが、結果は…

運転手の方が、死亡率が高く(心臓発作は約1.4倍/心臓病は約2.2倍)、特に55歳以降で、その違いが顕著になりました。ちなみに、35歳~64歳を対象として、10歳ごとにグループ分けをした結果だそうです。

その違いの大きな原因は、運転手の運動不足にあり、よって、運動不足では心臓の病気(特に肥満から循環器系の疾患)になりやすい。しかも、年齢が上がるほど、その影響は大きくなると、ひとまず結論づけられています。とはいえ、この場合の主な運動とは階段の上り下りのことですから(それなりに疲れますけど)、普段の生活の中でマメに身体を動かすのは大事だよね、くらいの話なのだと思います。「動」く生き「物」の宿命として。

ただ、何でもそうなのでしょうけど、嫌々、我慢して、無理に運動しているようでは、かえってストレスから不健康になることもありそうです。やはり、何をするにしても基本は「期待感」と「満足感」であり、好きなことを気持ちよくやるのに勝る健康法はないと思います。そして、「期待感」と「満足感」の感じやすさはトレーニングで鍛えられる脳力(脳の働き)ですから、きちんと訓練すれば、誰でも、その感度を高めることが出来ます。

もし、楽しいことが見つからないのだとすれば、それは、本当に楽しいことがないのではなく、楽しいと感じられる自分がいないだけかも知れません。ちなみに、ワクワク、夢中になっている時の脳波ではα波が増えることも確認済みです。 「期待感」と「満足感」の感度を高めるためにも、メンタルウェルネストレーニングを実践して、心身ともに健康な毎日を過ごせるようになりましょう。

2020年2月

ゾーン、フローと呼ばれる状態があります。簡単に言うと、時間を忘れて行為に没頭している“超集中状態”で、能力を最大限に発揮できる状態のことですが、この時の脳波には諸説があり、評価が定まっていません。“その瞬間”の脳波を計測するのが難しいという、そもそもの問題もありますが、少ない諸説の共通点を挙げてみると、どうやら、深いリラックスと高い覚醒を表す脳波が同時に強く計測される状態のようです。

個人的な見解としては、深いリラックスだけ、高い覚醒だけという単一の優勢状態は日常的にも起こり得るため、ゾーン、フローには、それらが併存した、ある種の変性意識状態が必要だと思っています。

高い覚醒も必要ということは、交感神経が強く働くための刺激=ストレスも必要という考え方ですが、そのまま緊張状態に終始するだけでは、能力発揮を阻害する要因にしかなりません。重要なことは、ストレス(覚醒)からリラックスへの切り替えを、どれだけ早く確実に行えるかであり、そのためには日々の準備が必要、つまりメンタルトレーニングの実践が必要ということです。 メンタルウェルネストレーニングでは、トレーニングを実践するだけでは分かりにくい具体的な脳の状態を、脳波を指標としてリアルタイムに観察します。また、前頭葉(Fp1、Fp2)から脳波を取得するため、主に意識活動に関わる脳の働きを観察するわけですが、人間にとって、能力発揮に対する最大の障壁は“意識”です。その“意識”との折り合い方を学ぶことは、メンタルトレーニングにおける最大の課題でもあります。